イネ品種の乾燥土壌中における水分吸収の品種間差

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要約

乾燥土壌中出芽性の良いイネ品種は鞘葉・胚乳・根の水ポテンシャルが低く、播種後2日目から出芽までの植物体含水率上昇速度が速い。このことが乾燥土壌中出芽性の品種間差の一因である。

  • 担当:中国農業試験場・作物開発部・栽培生理研究室
  • 連絡先:0849-23-4100
  • 部会名:作物生産(育種・栽培)
  • 専門:生理
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

水稲の乾田直播栽培の出芽・苗立ちを改善するために、乾燥土壌中出芽性の品種間差の機構を水分吸収の点から明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 鞘葉の水ポテンシャルは出芽率の低い日本晴(播種後12日目出芽率0.0%)で高く、出芽率が中の照熊(同4.1%)と高いGaiya Rate Bhasunamathe(同24.5%)で水ポテンシャルが低い(表1)。胚乳の水ポテンシャルは日本晴で高く、照熊、Gaiya Rate Bhasunamatheで低い。根の水ポテンシャルは日本晴と照熊で高くGaiya Rate Bhasunamatheで低い。以上、出芽性の良い品種は水ポテンシャルが低い。
  • 植物体含水率は播種後上昇する。播種後2日目から発芽までの植物体含水率上昇速度は50%の個体が出芽するまでの日数(50%出芽日数)の短いMoulla Topaとしばたで速く、50%出芽日数の長い日本晴では遅い(図1)。一方、発根時と発芽時の植物体含水率の品種間差は小さい。そのため、それらの含水率に達する日数に品種間差が生じ、発根、発芽までの日数ともに品種間差が生じる。また、出芽までの日数に品種間差が生じる。

成果の活用面・留意点

  • イネ品種の乾燥土壌中出芽性の解析に役立つ。

具体的データ

表1.シュート長別水ポテンシャルの品種間差異(97年)

 

図1.植物体含水率の推移の品種間差異

 

その他

  • 研究課題名:乾田直播特性の生理生態学的解明と検定法の確立
  • 予算区分:総合的開発(次世代稲作)
  • 研究期間:平成9年度(平成7~9年度)
  • 研究担当者:白土宏之、森田敏、高梨純一
  • 発表論文等:
    乾燥土壌中におけるイネ幼植物の吸水特性の品種間差異、日本作物学会紀事、66巻(別1号)、12-13、1997.
    イネ品種の乾燥土壌中における出芽経過および器官別水ポテンシャルの品種間差異、日本作物学会紀事、67巻(別1号)、136-137、1998.