家畜糞堆肥連用による土壌物理性改善に及ぼすマルチの効果と残効
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要約
家畜糞堆肥連用は、土壌の団粒構造を発達させ貫入抵抗を減少させるが、マルチは更にその効果を高める。無マルチ条件で堆肥連用を中止した(残効)3作時点では無施用と同レベルにまで団粒構造が崩壊し貫入抵抗は増加する。
- 担当:中国農業試験場・畑地利用部・畑土壌管理研究室
- 連絡先:0773-42-9909
- 部会名:生産環境(土壌肥料)
- 専門:土壌
- 対象:根菜類
- 分類:研究
背景・ねらい
有機物の施用効果のひとつとして、土壌の物理性改善があり、その結果作物の生育が良好になると言われている。そこで、家畜糞堆肥連用による土壌の団粒構造及び貫入抵抗について、マルチの効果及び残効を検討し、根菜類の安定生産技術を開発するための基礎資料を得る。
成果の内容・特徴
- 家畜糞堆肥(牛糞、豚糞)を連用(5年間、10作ダイコン)区は化成肥料連用区に比べ、1mm以上の団粒割合が高く、団粒構造が発達している。同一量の家畜糞堆肥を連用している場合は、マルチ栽培の方が無マルチ栽培に比べ団粒形成が促進される傾向がみられ、それは豚糞堆肥連用区で顕著に見受けられる。また無マルチ条件で堆肥連用を中止した残効区(4年間連用+残効3作目)では化成肥料連用区と同レベルにまで団粒構造が崩壊しつつあり、特に豚糞堆肥でその傾向が著しい(表1)。
- 貫入抵抗は家畜糞堆肥を連用した区は小さく、資材投入量が多いほどその傾向は顕著である。逆に化成肥料連用区は貫入抵抗が大きい。またマルチ区の方が無マルチ区に比べ貫入抵抗は小さい。残効区は連用中止して3作目(1.5年)では、連用区の同一処理区よりも貫入抵抗が大きくなる(図1)。
- 以上、家畜糞堆肥を連用することにより、土壌の団粒構造の形成と安定性が向上し、また貫入抵抗値が小さく、根の伸長、肥大に好都合な土壌になる。更にマルチはその効果を高める。しかし、その効果は連用中止して3作目時点では著しく小さくなる。
成果の活用面・留意点
- 窒素肥料18kg/10aを標準施用量として、各堆肥中の全窒素成分量で目標量を毎作全層(13cm)施用(標準量:牛糞堆肥3.75t/10a 豚糞堆肥2.66t/10a)した。牛糞堆肥(イナワラ牛糞、窒素1.37%)は1年間堆積及び豚糞堆肥(オガクズ豚糞、窒素1.90%)は完熟に近い市販のものを使用した。また土壌は細粒褐色低地土壌であり、マルチはシルバーポリフィルムを使用した。
- 土壌物理性を考慮した家畜糞堆肥施用技術確立のための基礎資料として活用できる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:有機物の施用戦略の策定による根菜類の高品質安定生産システムの構築
- 予算区分:一般別枠(物質循環)
- 研究期間:平成9年度(平成4~10年)
- 研究担当者:浦嶋泰文、塩見文武(現:九州農試)、須賀有子、堀 兼明
- 発表論文等:なし