中山間地域における農家民宿の経営特性と展開の方向性
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要約
経営が順調な農家民宿では、少ない投資額で多くの宿泊客を確保し、農業従事の程度も高く、将来は規模拡大よりもサービス内容の多角化高度化を指向している。また順調でない民宿では、ペンションロッジ化による整備拡大を指向している。
- 担当:中国農業試験場・総合研究部・農村システム研究室長
- 連絡先:0849-23-4100
- 部会名:営農
- 専門:経営
- 分類:研究
背景・ねらい
中山間地域対策として、農家の多面的活動推進の観点から、民宿経営が提唱されている。しかし、従来その分析は事例的なもので、提唱される支援策も一般論が多い。そこで広島県中山間地域の農家民宿経営状態の比較分析から経営特性と展開の方向性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 民宿全体で、経営状態の順調な民宿経営をみると、有意に投資額・収容定員が少ないにも関わらず、客室面積当たりの利用客数が多く、規模に比べて効率的な民宿経営を行っている(表1)。また、これらの順調経営では民宿の長所を、くつろげること、と考えている経営者が相対的に多く、接客対応上の配慮を行っていることが伺える。しかし、近隣のスキー場規模が大きく、スキー客に依存した経営体質であることも事実である。
- 農家民宿に限定すると、順調経営では、世帯主夫婦の農業従事の程度が高く、農産物販売額や生産組織参加率も有意に高く、農業生産活動と民宿活動との相互関連性がある。
- 農家民宿の今後の経営展開の方向性について、5項目を、変数分類から二つの方向性に区分した。一つは、自炊施設設置とペンションロッジ化で、個別対応による宿泊施設を中心にハード面の整備拡大を指向するもの。もう一つは、菜園設置、民宿の格付け、および特産物開発で、地域的対応によるソフト面の改善や宿泊施設以外の活動の複合化など経営内容の高度化を指向するものである(表2)。
- この二つの方向性に作用する経営特性は、前者では家族労働力にも恵まれ耕作放棄率は低いが、経営状態が順調でないため、施設投資を行い整備拡大により収益向上を指向している。後者では、経営面積が大きく、民宿のリピーター客率が高く、経営状態が順調で現状に満足しているため、現状の民宿規模を維持しその内容の改善高度化を指向している。今後は、この経営指向性の違いに対応した政策支援が必要である(表3)。
成果の活用面・留意点
農外兼業化が進んだ地域の農家民宿(特にスキー民宿)に適用できる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:農家民宿活動の展開条件と経営対応
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成9年度(平成7~9年)
- 研究担当者:大江靖雄
- 発表論文等:農家民宿の現段階とグリーンツーリズム展開への課題、中山間地域農業・農村の多様性と新展開、近畿中国農業研究叢書第5号、富民協会、1997。