安定農外就業中山間地域における民宿農家の経営活動と農地保全機能

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

中国中山間地域の民宿農家は、安定農外就業を前提として、省力化の進んだ水稲作へ傾斜し、土地集積を行っている。その土地集積機能と集落営農とが相互に補完し合って耕作放棄の発生を抑える農地保全機能を果たしている。

  • 担当:中国農業試験場・総合研究部・農村システム研究室
  • 連絡先:0849-23-4100
  • 部会名:営農
  • 専門:経営
  • 分類:行政

背景・ねらい

中国中山間地域では、耕作放棄の進展が全国に比べて深刻化しており、国土保全の観点から農地保全に関心が寄せられている。そこで、本研究では、広島県中山間地域を対象に、農家の多面的な活動がいかに地域の農地保全に貢献しているのかという観点から、民宿農家の特性解明を通じて地域の農地保全と個別経営の合理性との間のメカニズムを解明する。

成果の内容・特徴

  • 農業センサス集落データを用いた耕作放棄と経営活動との関係を計測した結果、圃場整備事業、農家民宿経営の有無、および集落営農による水稲作業受委託活動とが耕作放棄の防止(農地保全)に統計的に有意に貢献していることを明らかにした(表1)。標準化推定値から農地保全効果への貢献度を求めると、約4割が集落営農による効果、約3割が圃場整備効果、約3割が民宿農家の存在効果である。つまり、農地保全機能は、集落営農活動による維持効果、圃場整備効果、民宿農家の存在効果の結合効果といえる。
  • そこで、民宿農家が存在することによる効果の発生メカニズムを、個票データから民宿経営の有無による農家の経営特性を比較分析した(表2)。その結果、民宿農家は安定農外就業を中心にしながら、省力化の進んだ水稲作へ傾斜し、労働節約的な対応をして、土地集積を一定程度行ってきたことが判明した。しかし、生産組織との関連では、受託も行うが委託もより行っている。このことから、民宿農家の土地集積と集落営農活動が機能分担を行いながら、相互に補完し合って農地保全機能を果たしていることがわかる。
  • 政策的観点からみると、民宿活動を、公益的機能の一つとして、農家が土地集積による農地保全機能を果たしているか否かの指標として活用でき、中山間地域における農家経営多角化への政策的支援の根拠となり得る。また、こうした支援策は圃場整備や集落営農など既存の農業生産支援方策とも十分補完的に機能することを示している。

成果の活用面・留意点

安定農外就業地域での特にスキー民宿など農家活動多角化の支援政策に適用できる。

具体的データ

表1.経営活動・耕作放棄発生重回帰モデル(集落レベル)

 

表2.民宿農家・非民宿農家の特性比較

 

その他

  • 研究課題名:農林業が資源・環境に与える影響の経済的評価
  • 予算区分:総合的開発(貿易と環境)
  • 研究期間:平成9年度(平成8~12年)
  • 研究担当者:大江靖雄、室岡順一、友國宏一
  • 発表論文等:多面的活動農家の経営特性と機能、日本農業経済学会大会報告要旨、19970.