黒毛和種去勢子牛への粗飼料多給が産肉性に及ぼす影響

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要約

黒毛和種去勢子牛に濃厚飼料給与量を体重の1%とし、イタリアンライグラス乾草を自由摂取させると、肥育中の乾草摂取量と増体が大きくなる。また歩留基準値と枝肉中の骨重量が多く、皮下脂肪厚が薄い傾向を示す。

  • 担当:中国農業試験場・畜産部・産肉利用研究室
  • 連絡先:08548-2-0144
  • 部会名:畜産
  • 専門:飼育管理
  • 対象:肉用牛
  • 分類:指導

背景・ねらい

黒毛和種肥育では育成から肥育前期の粗飼料給与が重要であると言われており、肥育農家でも粗飼料の給与が広く行われているが、育成期の粗飼料多給が産肉性に及ぼす影響について検討した報告は少ない。また受精卵移植により乳牛を借り腹として早期離乳により生産された去勢子牛の産肉性に関する研究も極めて少ない。そこで、育成期間の粗飼料多給及び早期離乳が、肥育期間の増体、枝肉構成におよぼす影響を検討する。

成果の内容・特徴

  • 5~10カ月齢の間濃厚飼料を体重の1%に制限しイタリアンライグラス乾草(TDN 51.4% 粗蛋白質 6.2%)を多給した粗飼料多給牛と6~11カ月齢に粗飼料多給牛と同様に飼育した早期離乳牛は、5~10カ月齢に濃厚飼料と乾草を自由摂取した濃厚飼料多給牛に比較して、肥育開始体重は小さいが、肥育終了体重に差がない(図1)。
  • 粗飼料多給牛は濃厚飼料多給牛に比較して育成期の増体は小さいが、肥育前期(5カ月)、肥育中期(5カ月)、肥育後期(8カ月)の増体は大きい(図2)。
  • 肥育期間中の濃厚飼料摂取量は、3区に差がない。乾草摂取量は、肥育前期と中期で濃厚飼料多給牛が粗飼料多給牛や早期離乳牛より少ない傾向を示す(図3)。
  • 粗飼料多給牛は、他の2区に比較してロース芯面積、歩留基準値、皮下脂肪厚ですぐれた傾向を示す。早期離乳牛は、BMSと筋肉内脂肪含量の値が低く、BCSの値が大きい傾向を示す(表1)。
  • 粗飼料多給牛と早期離乳牛は、濃厚飼料多給牛に比較して枝肉半丸中の筋肉と骨重量が大きく、脂肪重量が小さい傾向を示す(表1)。
  • 第1+2胃重量は,育成期に乾草を多給した粗飼料多給牛と早期離乳牛が,濃厚飼料多給牛より大きな傾向を示す。早期離乳牛の第4胃重量が有意に小さくなる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 育成期から肥育前期にかけて、粗飼料を多給する肥育の基礎資料となる。
  • 早期離乳牛の肉質が良くないが、早期離乳牛の種雄牛が濃厚飼料多給牛及び粗飼料多給牛と異なることも要因として考えられる。早期離乳牛の肉質については更に検討を要する。
  • 粗蛋白質含量の低い粗飼料を多給すると、粗蛋白質摂取量が少ない場合もあるので注意する必要がある。

具体的データ

図1.肥育にともなう体重の変化

 

図2.肥育期別の一日当たり増体重の変化 図3.肥育期別の乾草摂取量

 

表1.屠殺解体結果

 

その他

  • 研究課題名:一貫生産体系における肥育牛の高度飼養管理システムの開発
  • 予算区分:地域総合
  • 研究期間:平成9年度(平成5~9年度)
  • 研究担当者:中西直人、相川勝弘、村元隆行、三津本 充(畜試)
  • 発表論文等:
    1)乾草を多給して増体と肉質の改善、「最近の主な研究成果」(中国農試)、7P、1997.
    2)黒毛和種去勢子牛への粗飼料多給が産肉性に及ぼす影響、第94回日本畜産学会大会、1998.