傾斜地カンキツ園用の歩行形汎用作業車

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要約

歩行形汎用作業車は、荷台が昇降するクローラ式の運搬台車に風筒式防除装置、肥料散布装置、あおりをそれぞれ装着し、傾斜地カンキツ園における防除施肥運搬高所作業軽労省力化を図ることができる。

  • 担当:四国農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム
  • 地城基盤研究部・機械施設研究室
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:傾斜地農業、作業技術
  • 専門:機械
  • 対象:果樹類
  • 分類:指導

背景・ねらい

傾斜地カンキツ作は機械化が遅れ、生産農家に長時間の重労働が強いられている。そこで、管理作業の軽労・省力化技術を確立するため、園内作業道が整備された傾斜地カンキツ園に対応し、機械装備費が少ない小型汎用作業車を開発する。

成果の内容・特徴

  • 歩行形汎用作業車は、その場旋回ができ、荷台が昇降するクローラ式台車に風筒式防除装置、肥料数布装置、あおりをそれぞれ装着して、1台で防除・施肥・運搬・高所作業ができる汎用作業車である。防除及び施肥装置の脱着は、カセット式で、一人作業で2分以内で行える(図1)。
  • 薬液を送風散布する風筒は、上向きに35度、下向きに20度、左右に85度まで油圧シリンダ及びバッテリシリンダで動かすことができる。このため、高低差の大きい園内作業道両側の樹木に対してスポット散布と葉裏への薬液の付着が良い振り散布ができる。肥料散布装置は、遠心送風機で発生する風で肥料を機体側方に送風散布するため、最大散布幅が4.6mと広く、園内作業道から樹冠下へ肥料散布ができる。
    高所作業では、荷台に搭乗して荷台の昇降操作ができるため、高所の採取作業が楽にできる。また、油圧シリンダによるソリ状のアウトリガーを設けているため、高所作業時の機体体安定性が高まる(図2)。
  • 薬液の散布性能は、散布量300~500L/10a、噴霧量16~23L/min、作業能率15a/hである。肥料の散布性能は、吐出量14~25kg/min、作業能率30a/hである。運搬能力は果実収穫用コンテナ10ケース、最大揚高1.18mである(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 道幅1.3m以上の園内作業道が2樹列あるいは1樹列おきに配置され、勾配15度以下の上下連絡道が整備されている傾斜地カンキツ園に導入できる。
  • 散布作業は、噴霧液の漂流飛散を避けるため、白然風速3m/s以下の条件下が好ましい。
  • 肥料散布装置は、粒状及びペレット状肥料に適応する。
  • 高所作業は、平坦な園内作業道上で行う。

具体的データ

図1.歩行形汎用作業車の概略図

図2.歩行形汎用作業車の作業状況

表1.歩行形汎用作業車の仕様及び性能

その他

  • 研究課題名:傾斜地大規模のカンキツ作における快適省力・高品質システムの確立
    (園地整備技術、機械化技術の定着条件の解明)
  • 予算区分:実用化促進(地域総合)
  • 研究期間:平成9年度(平成7~9年)
  • 研究担当者:山本 博、宮崎昌宏、長谷川美典、中尾誠司、高辻豊二
  • 発表論文等:山本 博、宮崎昌宏、長谷川美典、急傾斜カンキツ園における園内道の分布と配置計画、日本地形学連合秋季大会発表、1997