あずき根粒組織中に含まれる新規ポリアミンの生成機構

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要約

あずきには、動植物や微生物に通常見出されることのないポリアミンの一種、アミノブチルカダベリンが含まれている。本ポリアミンは根粒組織に特異的に検出され、宿主細胞と根粒菌バクテロイドとの共同作業で合成される。

  • 担当:四国農業試験場・地域基盤研究部・資源利用研究室
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:生産環境(土壌肥料)
  • 専門:生理
  • 対象:あずき
  • 分類:研究

背景・ねらい

根粒菌は宿主のマメ科植物の根に感染すると根粒組織を形成し、自らバクテロイドに分化して植物との共生生活を営む。根粒組織内にはニトロゲナーゼやレグヘモグロピン、ウリカーゼ等、窒素固定の代謝生理に重要な役割を果たす酵素や生理活性物質が含まれているが、細胞増殖因子として知られるポリアミンもその一つである。本研究の自的は、あずきの根粒中に特異的に検出される新規ポリアミンの生成機構を明らかにすることにある。

成果の内容・特徴

  • あずきの根粒組織には、根粒菌の増殖因子であり主要ポリアミンであるホモスペルミジン以外に、動植物や微生物の細胞に検出されない新規ポリアミン、アミノブチルカダベリンが含まれる(図1)。本ポリアミンは、培養した根粒菌、あずきの根、茎、葉等他の植物組織には検出されず、根粒に特異的に存在する。
  • 根粒を宿主細胞サイトソルとバクテロイドに分画すると、ジアミンのプトレシン、カダベリンの多くが植物細胞サイトソルに存在するのに対し、ホモスペルミジン及びアミノブチルカダベリンは大半がバクテロイドに分布する(表1)。
  • あずき根粒から分離したバクテロイドの無細胞抽出液に、プトレシン及びカダベリンを添加すると、アミノブチルカダベリンが生成する(データ省略)。
  • 培養根粒菌から精製したホモスペルミジン合成酵素に、NADの存在下、プトレシン及びカダベリンを添加すると、ホモスペルミジンとともにアミノブチルカダベリンが生産される(データ省略)。
  • 一連の実験結果から、あずきの根粒内に含まれる新規ポリアミンが、(図2)に示すように、宿主植物側から供給されるカダベリンとプトレシンを基質として、バクテロイド内のホモスペルミジン合成酵素の働きによって生成することを明らかにした。

成果の活用面・留意点

  • 本ポリアミンは根粒内にμmol/gDry wt.レベルで存在するが、その機能・生理的役割については未知であり今後の検討を要する。また、カダベリンを大量に含む場合、あずき以外のマメ科植物根粒中に本ポリアミンが検出されることもある。

具体的データ

図1.あずき根粒内の主要ポリアミン、ホモスペルミジンと新規ポリアミン

 

表1.根粒の宿主細胞とバクテロイドに含まれるポリアミン

 

図2.新規ポリアミン、アミノブチルカダベリンの根粒組織内での生合成メカニズム

その他

  • 研究課題名:土壌微生物におけるポリアミン代謝系発現機構
  • 予算区分:大型別枠(生物情報)
  • 研究期間:平成9年度(平成7年~9年)
  • 研究担当者:藤原伸介・花野義雄(四国農試)・米山忠克(農研センター)
  • 発表論文等:A new polyamine 4-aminobutyl cadaverine, J. Biol. Cemi. , 270, 9932~9938, 1995.