高リジン裸麦中間母本農2号
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要約
裸麦中間母本農2号(旧系統名:四R系1634)は、二条並性の高リジン裸麦系統で「イチバンボシ」に比べてリジン含有率が約1.5倍高く、第一制限アミノ酸がイソロイシンで、収量性はやや低いが、リジン収量は高い。胚が大きくしわ粒で、アミノ酸組成、ホルデイン電気泳動像等について、高リジン遺伝子1ys3a
の特性を示す。
- 担当:四国農業試験場・作物開発部・資源作物育種研究室
- 連絡先:0877-62-0800
- 部会名:水田・畑作
- 専門:育種
- 対象:麦類
- 分類:研究
背景・ねらい
穀類に含まれるアミノ酸の中で、人間にとって最も不足するアミノ酸(=第一制限アミノ酸)はリジンであり、同様に単胃動物の飼料として利用する場合にも、リジンを補ってやる必要があり、高リジン品種の育成が望まれている。
デンマークで育成された1ys3a 遺伝子を持つ「Ris045g.jpg (1821 バイト)1508」は、リジン含有率が極めて高いことが知られているが、晩生、長稈で、倒伏に弱く、交配母本としてきわめて使いにくい。そこで、1ys3a 遺伝子の特性を有し、日本の裸麦の交配母本として使いやすい中間母本の育成を行った。
成果の内容・特徴
本系統は、平成2年度(3年4月)四国農業試験場において、高リジン裸麦系統の育成を目的に、「四国裸84号」に極高リジン系統「四系8694」を交配(四交1275)し、派生系統育種法で育成された高リジン裸麦中間母本である。なお、「四系8694」は、「Ris045g.jpg (1821 バイト)1508」と「Hiproly」との交雑育成系統である。
- 特定形質:リジン含有率は、標準品種イチバンボシ(0.40%)に比べ、1.5倍高い0.60%で、これまでわが国で育成された高リジン品種サンシュウ(0.49%)よりも高い。アミノ酸組成は、高リジン遺伝子1ys3a を持つRis045g.jpg (1821 バイト)1508とほぼ同じで、第一制限アミノ酸がリジンではなくイソロイシンである。ホルデイン電気泳動像、粒の形状等についても、1ys3a 遺伝子の特性を示す。また、蛋白質含有率もやや高く、「イチバンボシ」に比べ収量性はやや低いものの、リジン収量は「イチバンボシ」比で126%と多い。(表1)
- 形態的特性:叢生はやや直立、並渦性は並性で、稈長はやや短、稈の太さは細、条性は二条で、穂型は矢羽根型、穂長はやや長、粒着の粗密は中、芒長はやや長、底刺毛茸は長である。千粒重は大、リットル重はやや小である。(表2)
- 生態的特性:播性はII、出穂期はやや早、成熟期は早、皮裸性は裸性で、耐倒伏性は強、収量性はやや多、縞萎縮病抵抗性は弱、うどんこ病抵抗性は中である。(表2)
- 外観・精麦品質:胚がやや大きく、粒にしわが多く、原麦の見かけの品質は下の中である。粒質は硝子質で、精麦歩留は低で、精麦白度は極低である。(表3)
成果の活用面・留意点
- 縞萎縮病抵抗性、うどんこ病抵抗性が十分でなく、穂発芽性もやや易なので、交配親の選定に当たってはこれらの点に留意すること。
具体的データ



その他
- 研究課題名:裸麦のアミノ酸とアミロース含有率の育種適改善による新品種の育成(高品質輪作)、裸麦の早生良質品種の育成(経常)
- 予算区分:高品質輪作・経常
- 研究期間:平成2~9年度(高品質輪作は、平成3~7年度)
- 研究担当者:土井芳憲、藤田雅也、土門英司、伊藤昌光、石川直幸
- 発表論文等:なし