温州みかんの隔年片側交互結実法による管理作業時間の短縮
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要約
1列植えで樹形を棚仕立てにしている温州みかん(杉山温州)に対し隔年に樹冠の片側だけ結実させ、残り反対側は強剪定・全摘果剤散布という栽培法を取り入れることにより、果実品質は大差なく、収量は8割程度に低下するが管理作業時間を6割程度に減少させうる。
- 担当:四国農業試験場・作物開発部・果樹栽培研究室
- 連絡先:0877-62-0800
- 部会名:果樹
- 専門:栽培
- 対象:果樹類
- 分類:指導
背景・ねらい
近年栽培面積が急増している高糖系温州みかんの着花量は、前年の収穫量によって大きく左右されるという隔年結実性が強く、かつ着果量は幼果期の気象条件にも影響されるなどして、毎年安定して多収量を得ることか難しい。そこで、樹の半分のみに着果させた場合、翌年には残りの半分について安定して着果することと、品質向上を期待して、隔年交互結実法が検討されている。ここでは、杉山温州成木の棚仕立てという特殊な樹形において、隔年交互結実法を適用した場合について管理作業時間も含めて慣行法と比較検討する。
成果の内容・特徴
- 棚仕立て片側交互結実樹の1樹あたり収量は、開心自然形で慣行的に結実させる場合の6~7割程度であるが、栽植本数の関係から10aあたりでは慣行法の8割程度になる。また、連年安定生産性については慣行法と大差ない(表1)。
- 果実品質のうち糖度は全摘果剤を使わないと低下し、かえって品質として劣ることになるが、全摘果剤を使用することで慣行法と大差なくなる(表1)。
- 棚仕立て片側結実法の場合、剪定が極めて楽になり、作業時間は慣行法の2割程度に減少する(表2)。
- 摘果作業は樹冠の片側を全摘果剤を用いて行うため省力化か図られ、薬散時間も含めて摘果に要する時間は慣行法の1割程度である(表2)。
- 収穫作業時間は片側結実法によってやや短縮されるが、むしろ作業能率は劣る。剪定、摘果、収穫の全作業時間は片側交互結実法でば慣行法の約6割ですむ(表2)。
成果の活用面・留意点
- 本成果は隔年結実性の強いカンキツ類に適用可能と考えられるか、大果生産を目的にする場合には使えない。また、無摘果にした場合は正品果率は劣る。なお、管理作業上1列植えか好ましい。
- 管理作業が単純で機械的となり、特殊技術・技能がいらず誰でも作業しうるものとなる。剪定の作業時間は剪定鋏でなく、機械を用いることによりさらに短縮されよう。また、収穫作業能率を上げるためには、棚仕立ての樹冠幅をせばめたり、内部果実は無理に収穫しないことで対処しうる。
- 品種系統間による適否についてはさらに検討する必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:傾斜地大規模カンキツ作における快適省力・高品質生産システムの確立
(高品質安定生産のためのマルチ栽培法及び結実法の改良と適用)
- 予算区分:実用化促進(地域総合)
- 研究期間:平成9年度(平成5年~9年)
- 研究担当者:内田誠・瀧下文孝・清水徳朗
- 発表論文等:なし