島しょ部温州みかん産地におけるスピード・スプレーヤ(SS)導入の経済的効果

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要約

島しょ部温州みかん産地におけるSS導入の経済的効果を、線形計画モデルにより試算し、慣行体 系に比べ限界規模拡大(+21%)と10a当たり農業経営費低減(-18%)の効果、及び農業所得減少(-33%)とな ることを示した。

  • 担当:中国農業試験場・総合研究部・動向解析研究室
  • 連絡先:0849-23-4100
  • 部会名:営農
  • 専門:経営
  • 対象:果樹類
  • 分類:指導

背景・ねらい

温州みかん作では、土地条件の制約(傾斜立地・零細分散耕地制)や手作業を主とする技術特性により機械化 が遅れている。特に、SS導入については、以上 の制約条件に加え、園地整備(間伐:栽植本数の減少)による収量・所得の減少が懸念されている。しかし、S S導入による具体的な収量・所得の減少幅につい ては、その導入事例が少ないこともあり、必ずしも明確に解明されているとはいえない。 そこで、広島県島しょ部温州みかん産地のSS既導入農家(A農家)及びSS未導入農家(B農家)を対象とし た調査結果を基礎データとして、SS導入の経 営経済的効果を線形計画モデルにより試算し、その導入を検討する際に利用可能な基礎資料を提供する。

成果の内容・特徴

  • 限界規模をみると、慣行体系:213 a、SS体系:258 aであった。つまり、SS導入により、限界規模が約45 a(+21%)拡大する 。
  • 10 a当たり農業経営費をみると、135a以上の規模ではSS体系が経済的に有利である。具体的に、限界規模におけるSS体系の10a当た り農業経営費は、同慣行体系と比較して -18%水準となる。しかし、135a以上の規模における両体系間の費用格差は、大きくは拡大していない。他方 、10a当たり農業粗収益をみると、全ての 規模において慣行体系が上回る。具体的に、限界規模におけるSS体系の10a当たり農業粗収入は、同慣行体 系と比較して-36%の水準となる。
  • 農業所得をみると、限界規模におけるSS体系の農業所得(258a,471万円)は、同慣行体系(213a , 705万円)と比較して- 33%の水準となる。しかし、この格差は、収量の減少幅(慣行比:-42%)よりも小さい。
  • 本試算結果は、SS導入による農業所得の減少幅が、栽植本数減少による収量の減少幅よりも小さい ことを示している。しかし、経済的効果の観点からは、SS体系が慣行体系よりも有利であるとはいえない。

成果の活用面・留意点

  • 近年、温州みかん産地では、高齢化・担い手問題等を背景に、軽労化が優先課題となっており、SS導入 による軽労化は、担い手の確保・増大、更に、温州みかん産地全体の生産力の維持・向上に重要であると考え られる。
  • 試算の基礎となったデータは、A、Bそれぞれ代表的な1戸の農家の実態調査に基づくものである。

その他

  • 研究課題名 : 島しょ部温州みかん産地における省力化技術導入の経営経済的効果の解明
  • 予算区分 : 経常
  • 研究期間 : 平成10年度(平成8~10年)
  • 担当:研究担当者 : 松下 秀介
  • 発表論文等 : 温州みかん作における省力化技術導入の意義と課題、中国農業試験場研究報告(投稿予定 )