ギャバ(γ-アミノ酪酸)を多く含んだ脱脂米胚芽の有効利用
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要約
米油を搾り取ったあとの脱脂米胚芽からギャバを豊富に含む乾燥物を作成した。これは高血圧者に対する顕著な血圧降下作用を示す等、保健機能性をもつ食品素材である。
- 担当:中国農業試験場・作物開発部
・品質特性研究室
- 連絡先:0849-23-4100
- 部会名:流通利用
- 専門:加工利用
- 対象:稲類
- 分類:普及
背景・ねらい
米の胚芽は精米の過程で糠とともに取り除かれた後、一部米油等の原料として使われているが、搾油後は廃
棄物として処理されているのが現状である。搾油後
の米胚芽は油分が除去され、脂質の酸化による品質劣化が抑えられることから、食品素材としての利活用が考
えられる。本研究のねらいは、搾油後利用されるこ
とのない脱脂米胚芽に動物の血圧を下げる機能等を有するγ-アミノ酪酸(Gaba:ギャバ)を蓄積して付
加価値を高め、食品素材として有効利用を図ること
にある。
成果の内容・特徴
- 脱脂米胚芽を40°C、pH5.80の蒸留水に4時間浸漬してギャバを蓄積する。胚芽の量に対する浸漬水量は、
浸漬後の乾燥を考慮すると2倍量程度が適当と考えられる。
- 試作した遠赤外線乾燥装置と熱風乾燥機を使い、ヒーター1kw当たりの胚芽量を揃えて、水浸漬後の脱脂米胚芽の乾燥を比較した結果
、乾燥2時間後の含水比は遠赤外線乾燥で10.3%、熱風乾燥で33.4%と遠赤外線乾燥のほうが乾燥効率が高い
。
- 更年期の女性20名を対象に、ギャバを蓄積した脱脂米胚芽とプラセボ(米粉)を投与してダブルブラ
インドによる臨床試験を行った結果、高血圧症の6名で有意な血圧降下作用が認められる。正常域の14名では有意な血圧低下は認められていない。さらに主要な精神症状評価項目(憂うつ気分、イ
ライラ、全身倦怠感、興奮、不眠・睡眠障害、めまい等)においても全体の75%で明らかな改善作用を認めて
いる。
成果の活用面・留意点
- ギャバを蓄積した脱脂米胚芽を素材とした錠剤タイプの栄養補助食品(オリザギャバ21)が市販されてい
る他、加工食品への配合素材としての利活用が図られている。
- 穀類由来のギャバに関して、中国農試が特許「γ-アミノ酪酸を富化した食品素材」、「γ-アミノ
酪酸の製造法」、「γ-アミノ酪酸を富化した脱脂食品素材(共願)」を所有している。
その他
- 研究課題名 : 1)脱脂胚芽の有効利用技術の確立 2)Gabaの含量を高めた米胚芽の保健機能食品への加工に関する研究
- 予算区分 : 1)交流共同研究 2)官民交流共同研究
- 研究期間 : 平成10年度(平成7~9年)
- 担当:研究担当者 : 小野田明彦、三枝貴代(現:農研セ)、堀野俊郎、村上太郎*、岡田忠司*、村井弘道*(*オリザ油化(株))、梶本修身(大阪外大)、宮本歩(大阪大)、田中敬剛(白井病院)
- 発表論文等 :
1)遠赤外線によるGaba富化脱脂米胚芽の乾燥、日本食科工学会、第44回大会講演集、82、1997.
2)Effect use of rice germ with gamma-aminobutyric acid(GABA), AACC Annual
Meeting,Minneapolis,1998.
3)その他学会発表2件、特許出願1件(共同)