黒毛和種における脂肪細胞の分化調節因子PPARγ2の変異とその簡易検出

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要約

黒毛和種には脂肪細胞分化の主要な制御因子であるPPARγ2の変異が存在する。変異体では18番目のアミノ酸がAlaからValへ変換している。その変異は開発した簡易検出法によって検出できる。

  • 担当:中国農業試験場・畜産部・産肉利用研究室
  • 連絡先:08548-2-0144
  • 部会名:畜産
  • 専門:育種
  • 対象:肉用牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

現在、脂肪交雑は牛肉価格の主要な決定要因であることから、その形成については種々の検討がなされてい るが十分な成果は得られていない。脂肪交雑の実体 は筋肉内の脂肪組織であり、その形成には未分化な脂肪前駆細胞の脂肪細胞への分化が関与していると推定さ れている。近年、分子遺伝学的手法の著しい進展に より、ペルオキソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)が脂肪細胞分化のマスターレギュレーターの一つ であることが明らかになり、和牛のPPARγに関 する情報が強く求められている。

成果の内容・特徴

  • 黒毛和種の一部において、脂肪細胞の主要な分化調節因子PPARγ2に変異が存在し、変異体では18 番目のアミノ酸がAlaからValへ変化していることを見い出した。
  • 変異部位近傍には制限酵素の認識サイトが無く、制限酵素切断による変異の検出が困難であったため 、ミスマッチプライマーの適用による制限酵素サイトの導入と制限酵素切断を併用した簡易検出法を開発し、 変異個体の簡易検出と多検体の処理を可能とした。

成果の活用面・留意点

    PPARγが脂肪細胞分化のマスターレギュレーターの一つであること、脂肪細胞の分化及び脂肪交雑の形 成と関係の深いビタミンAの生理作用の一つとして PPARγへの関与が示唆されていること、変異部位がPPARγ2の生理機能上重要な30アミノ酸内に存 在すること等から、今回見い出したPPARγ2変 異が脂肪交雑と関連している可能性は十分考えられる。今後、簡易検出法を用い、多くの個体についてホモ変 異個体の存在の有無及び、脂肪交雑と本変異との関 連について検討を行っていくことが重要である。

その他

  • 研究課題名 : 和牛における脂肪蓄積遺伝子の筋肉内発現による脂肪交雑判定技術の開発
  • 予算区分 : 大型別枠(形態・生理)
  • 研究期間 : 平成10年度(平成10~12年)
  • 担当:研究担当者 : 相川勝弘、中西直人、村元隆行
  • 発表論文 : 黒毛和種における脂肪細胞の分化制御因子PPARγ2の変異について、日本畜産学会報 、70巻7号、1-5、1999.