多孔質コンクリートパイプを用いた園内作業道流下水の取水システム

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要約

本システムは、傾斜カンキツ園園内作業道に市販の多孔質コンクリートパイプを埋設し、作業道流下水を捕捉してタンクに導水するものである。集水面積111m2(面積の約45%は道路面等の非浸透域)の園地では、総雨量30~50mm程度の降雨により、容量800リットルのタンクが満水になる。

  • 担当:四国農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:傾斜地農業、果樹
  • 専門:農地整備
  • 対象:果樹類
  • 対象:指導

背景・ねらい

四国中山間傾斜地カンキツ園では、適当な水源がなく、灌漑や防除などに利用する営農用水の確保が極めて困難な状況にある。しかし、園地における降雨流出水の取水方式が確立されていない現状にあり、合理的かつ省力的集水技術の開発が求められている。そこで傾斜カンキツ園の園内作業道を流れる雨水を捕捉する技術を開発する。ここでは、多孔質コンクリートパイプを用いた取水法について検討する。

成果の内容・特徴

  • 市販されている多孔質コンクリートパイプを園内作業道を横断するように埋設し、パイプ周辺を砕石(5~20mm)で埋め戻す(図1)。
  • コンクリートパイプ浸透水は、漏斗で受け、地下に埋設した塩ビパイプを通して貯水タンク(容量800リットル)へ導く(図2)。
  • 集水面積111m2を有する園内作業道(面積の約45%はマルチおよび作業道)では、総雨量30~50mm程度の降雨があれば、800リットルのタンクは満水になる(図3)。
  • 大雨によりコンクリートパイプや砕石の部分に流出土砂が堆積すると、目詰まりなどにより通水阻害が起こるため、その後の降雨流出に対する取水量は激減する。土を除去し、砕石やコンクリートパイプを洗浄することにより、取水機能は回復する(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本取水法は、園内作業道整備園における雨水利用技術として適用する。
  • 取水をタンクへ導水するためのパイプは、作業道を跨ったり、畑面を露出させないよう地中埋設式にすることが望ましい。そのためには、園内作業道の舗装時に合わせて施工するのが合理的である。
  • 土砂の流出の多い園では、コンクリートパイプが目詰まりを起こさぬよう、大雨の後洗浄などの維持管理作業が必要となる。
  • 洗浄は、動力噴霧機などを利用し、砕石やコンクリートパイプ周りの土砂を除去する方法で行う。
  • 洗浄などによっても機能が回復しない場合、パイプ交換を要するので、パイプはできるだけ生コンなどで固定しない構造にしておく方がよい。

具体的データ

図1.取水装置の概略

 

図2.取水システムの概略

 

図3.雨量と取水量の関係

 

図4.取水機能の低下と回復

 

その他

  • 研究課題名:高品質化のための土壌管理技術を導入した中山間カンキツ園の軽作業システムの確立-傾斜地園の水環境制御技術の開発-
  • 予算区分:総合研究(地域総合)
  • 研究期間:平成11年度(平成10~13年)
  • 研究担当者:中尾誠司,吉川弘恭,長谷川美典
  • 発表論文等:なし