遊休棚田の雑草・土壌管理のための山羊利用
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要約
遊休棚田に山羊を放牧することにより、植生は大型の雑草や雑かん木が抑圧され、草丈の低い雑草に移行し、耕作再開か容易な状態に保全管理できる。土壌の物理性は踏圧により表層に近い部分が緻密化し、透水性は遊休棚田より低下する。
- 担当:四国農業試験場・総合研究部・総合研究第2チーム
- 連絡先:0877-62-0800
- 部会名:傾斜地農業
- 専門:雑草、土壌
- 対象:雑草類、家畜類
- 対象:指導
背景・ねらい
四国の中山間地域では、傾斜地域に立地する農地が多く、とくに急傾斜地では一筆が狭く、遊休地化すると雑草が旺盛に繁茂し、農地の再利用や景観上問題となっている。このような遊休棚田を将来とも農地として使用できるように管理するには、平衡感覚および雑草等の利用性に優れ、中型で踏圧の小さい山羊が適している。そこで遊休棚田に山羊を放牧し、植生や土壌の変化を明らかにし保全管理を図る。
成果の内容・特徴
- 高知県上佐町の休耕後2~5年経過した棚田を、高さ1.2mの牧柵で囲み、山羊を放牧した。放牧頭数は12頭/haである。山羊はクズ、ススキ、ノイバラなどの強害雑草を含むほとんどの雑草等を、1頭1日あたり約2kg(乾物重)採食し、その2~3倍量を踏圧で枯らす。
- 放牧により約1年で雑草量は約20%に抑制できる(図1)。特にススキ、クズに対する除草効果が高く、植生は草丈の低いミゾソバ、ヨモギ、タデなどに推移し、景観が良好になる(表1)。
- 遊休地化した棚田では、土壌表層の固相率の低下、透水性の上昇、硬度の減少が認められ、耕盤は維持されない。一方、山羊を放牧することにより、約12cmの深さまで土壌の緻密化、透水性の低下、硬度の上昇が生じるか、これより深い層には変化がない(図2,表2)。
- 土壌中の硝酸態窒素、可給態りん酸は遊休地では耕作田(代かき前)に比べて少ない。山羊の放牧により硝酸態窒素、可給態りん酸、および交換性カリが表層20cm程度の深さまで富化される。化学性の悪化はない(表2)。
成果の活用面・留意点
- 山羊によって雑草が抑制された状態の遊休地は園地等にも利用できる。
- 雑草抑制後は輪換放牧し、過放牧を避ける。
- 本成果は農耕地と非農耕地の保全管理技術体系における遊休棚田の畜力利用による保全管理技術として活用する。
具体的データ




その他
- 研究課題名:遊休・放棄農耕地管理・保全技術の開発
- 予算区分:総合研究(地域総合)
- 研究期間:平成11年度(平成9~11年)
- 研究担当者:吉川省子、豊後貴嗣、野中瑞生、長崎裕司、川嶋浩樹
- 発表論文等:
- 山羊の役利用-遊休・耕作放棄地の雑草防除-、畜産の研究、53(10)、48-54、1999.
- ヤギの繋牧方法、畜産の研究、54(1)、10-12、2000.