カンキツ作における園内作業道・小型機械導入の規模拡大・所得増大効果

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要約

園内作業道・小型機械化技術のカンキツ作経営への導入は,ハウスミカンがある場合は新技術を導入しない時と比べ面積で100a,所得で8.5%の増加をもたらす。また,ハウスミカンがない場合は,新技術を導入しない時と比べ面積で120a,所得は24.2%の増加を可能とし,規模拡大・所得増大効果が認められる。

  • 担当:四国農業試験場・総合研究部・農業経営研究室
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:営農,傾斜地農業
  • 専門:経営
  • 対象:果樹類
  • 対象:指導

背景・ねらい

平均傾斜度25度の山成果樹園を対象に開発された園内作業道・小型機械(小型風筒式防除機,クローラ型運搬機,施肥機)の新技術は,省力・軽労化や品質向上等の効果をもたらし,収量には余り影響を与えないことが知られている。そこでこの新技術をを導入した場合の規模拡大・所得増大効果を実証園農家の記帳及び調査データをもとに線形計画法によって検討する。

成果の内容・特徴

  • モデル作成の前提を表1に,また,試算に利用した収益関連係数を表2に示す。新技術導入によって費用は,園内作業道造成費(24,450円/10a),小型機械の減価償却費(年額497,250円),燃料費(2,761円/10a)が増加する。また,実証園農家ではハウスミカンが導入されているが,ハウスミカン導入農家はまだそれほど多くはないためハウスミカンがない場合も想定した。その場合の収量は実証園農家がハウスミカン導入により幾分低いことから露地作における先進農家の収量を参考に設定した。
  • ハウスミカンがある場合において現状の規模(230a)では新技術導入時の方がプロセス純収益は多いが,所得は新規機械投資の減価償却費が加わるため低くなる。新技術導入の時の所得が上回るには280aの経営規模が必要となる。
  • ハウスミカンがある場合の規模拡大の限界面積は460aとなり,新技術を導入しない時の限界面積と比べ面積で100a,所得で100万円(8.5%)上回る。
  • ハウスミカンがない場合では,規模拡大の限界面積は496aとなり,新技術を導入しない時の限界面積と比べ,面積で120a,所得で300万円(24.2%)上回る。

成果の活用面・留意点

  • 新技術を導入した経営モデル作成のための指標となる。
  • モデル作成に用いたデータは,ハウスミカンを導入した比較的優良な1農家の事例から得ていることに留意する必要がある。
  • 果樹は成園化するまでには一定の年月が必要なこと,借地の場合にも樹木の手入れや園内作業道の整備が必要になるため,ここで示した規模に達しても目標所得をすぐには得られないことに留意する必要がある。

具体的データ

表1.試算の前提

 

表2.試算に利用した収益係数

 

表3.試算結果

その他

  • 研究課題名:中山間カンキツ作新技術の経営経済的評価と営農モデルの策定
  • 予算区分:総合研究(地域総合)
  • 研究期間:平成11年度(平成10~14年)
  • 研究担当者:関野幸二,迫田登稔,島 義史,高橋弘江
  • 発表論文等:傾斜地カンキツ作における新技術の経営的評価,平成11年度日本農業経営学