培養液窒素形態の変更によるホウレンソウの低硝酸、低シュウ酸化技術

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要約

ホウレンソウの養液栽培において、収穫10日前頃に培養液の窒素形態を硝酸態窒素から、硝酸態窒素とアンモニア態窒素を混合したものに変更すると、生育は遅れるものの、硝酸、シュウ酸含量は減少し、ビタミンC含量は増加する。

  • 担当:中国農業試験場・畑地利用部・畑土壌管理研究室
  • 連絡先:0773-42-9909
  • 部会名:生産環境(土壌・気象)
  • 専門:肥料
  • 対象:葉茎菜類
  • 分類:指導

背景・ねらい

ホウレンソウの調理法の多様化に伴い、ホウレンソウ中に多量に含まれる硝酸、シュウ酸の過剰摂取の危険性が指摘されている。また、これまでに小規模のホウレンソウの養液栽培において、栽培途中に培養液の窒素形態を変更すると、硝酸、シュウ酸含量が減少することがわかっている。そこで実用規模の養液栽培において、培養液窒素形態の変更時期、培養液の窒素形態及び濃度が、ホウレンソウの生育、硝酸、シュウ酸、ビタミンC含量に及ぼす影響を解明し、低硝酸、低シュウ酸化技術の開発を行った。

成果の内容・特徴

  • 収穫の10日前に、培養液の窒素形態を硝酸態窒素のみからアンモニア態窒素のみに変更すると、ホウレンソウの生育はやや低下するが、硝酸、シュウ酸は大きく減少する(表1)。
  • ホウレンソウの生育、硝酸、シュウ酸、ビタミンC含量は、培養液の変更前後の窒素形態の影響を大きく受け、その影響は生育時期によって異なり、硝酸含量は収穫期、シュウ酸含量は培養液変更後に減少する(図1)。
  • ホウレンソウの生育を確保し、硝酸、シュウ酸含量を減少、ビタミンC含量を増加させるには、培養液の窒素形態及び濃度を、変更前は硝酸態窒素12meq/L、変更後は硝酸態窒素3meq/L、アンモニア態窒素9meq/Lとなるように混合し、収穫時期をやや遅くすることが適当である(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、湛液型の養液栽培装置(フロートマット装置)で得られたものである。
  • 培養液窒素形態を変更すると、変更しない場合より生育がやや遅れる傾向がある。
  • 培養液の効率的利用のために、培養液の変更は変更直前の培養液の硝酸態窒素濃度をもとにして、所定の濃度になるように一部変更し、アンモニア態窒素液のみ追加する。

具体的データ

表1.培養液の変更時期とホウレンソウの生育、硝酸、シュウ酸、ビタミンC含量

 

図1.培養液の窒素形態とホウレンソウの生育時期別の葉重及び硝酸、シュウ酸、ビタミンC含量

その他

  • 研究課題名:培養液管理による品質構成成分の調節
  • 予算区分:営農合理化(地域総合)
  • 研究期間:平成11年度(平成7~11年)
  • 研究担当者:須賀有子、福永亜矢子、浦嶋泰文、堀 兼明
  • 発表論文等:
    • 培養液の窒素濃度、形態がホウレンソウの硝酸、シュウ酸含量に及ぼす影響、日本土壌肥料学会講演要旨集、44、113、1998.
    • 培養液窒素形態の変更がホウレンソウの硝酸、シュウ酸含量に及ぼす影響、95回日本土壌肥料学会関西講演要旨集、30、1999.