脂肪酸カルシウムの給与による肉用牛から排泄される窒素量の低減
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要約
粗飼料多給の飼育条件下において、脂肪酸カルシウムを給与することにより、育成期における黒毛和種去勢牛から排泄される日増体量当たりの糞中窒素量を、給与しない牛に比べ低下できる。
- 担当:中国農業試験場・畜産部・栄養生理研究室
- 連絡先:08548-2-0144
- 部会名:畜産
- 専門:動物栄養
- 対象:肉用牛
- 分類:研究
背景・ねらい
家畜の排泄物中の窒素は、排泄後に適切な処理を怠ると、環境汚染物質となる。そこで、肉用牛から排泄される糞尿中の窒素量を減らすため、窒素を含まない高エネルギー飼料である脂肪酸カルシウムを用い、生産量(増体量)当たりの窒素排泄量を減らす給与方法を検討する。
成果の内容・特徴
- 表1に示すような粗飼料多給の飼育条件下の黒毛和種去勢牛について、脂肪酸カルシウム(体重の0.04%)の給与による糞尿中の窒素排泄量の低減効果を、育成期と肥育期において検討する。
- 日増体量当たりの窒素排泄量を比較すると、育成時においては、糞中排泄窒素は脂肪酸カルシウムの給与により明らかに低下する(図1)。また、尿中及び総排泄窒素も無添加区の牛に比べ約20%低下する傾向が認められる。しかし肥育期においては、両区に差が認められない(図1)。
- 脂肪酸カルシウムの給与により、育成期と肥育期ともに粗脂肪の見かけの消化率が上昇するが、他の成分の消化率に対する影響はない。日増体量は、育成期において添加区がわずかに高い傾向を示すが、超音波診断装置により皮下脂肪厚を測定した結果、両区に差は認められない(表2)。
成果の活用面・留意点
- 7週齢で早期離乳した黒毛和種子牛に15週齢まで脂肪酸カルシウムを添加給与すると、無給与の牛に比べ日増体量の増加と排泄窒素量の減少が認められたが、第一胃内での炭水化物とNDFの消化量が低下した。しかし、下部消化管を含めた消化率への影響は認められない。
- この結果は、肉用牛における粗飼料多給の飼育条件での結果であり、濃厚飼料多給型での飼育に直接当てはめることはできない。
具体的データ



その他
- 研究課題名:肉用牛における家畜排泄物中の窒素化合物量低減技術の開発
- 予算区分:畜産対応研究(家畜排泄物)
- 研究期間:平成11年度(平成6~11年)
- 研究担当者:土肥宏志、小迫孝実、林義朗、西村宏一