水稲の湛水土中直播におけるスクミリンゴガイ防除のための石灰窒素の散布と出芽

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要約

スクミリンゴガイ防除に効果のある石灰窒素を湛水直播(落水出芽)に使用した場合、酸素発生剤無被覆籾では散布量により出芽が抑制されるが、被覆籾では麦稈鋤込み条件を含め抑制はほとんど無い。

  • 担当:九州農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム
           (九州沖縄農業研究センター水田作研究部水田作総合研究チーム)
  • 連絡先:0942-52-3101
  • 部会名:水田作総合研究
  • 専門:栽培
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

温暖地の水稲栽培において湛水中に食害を与えるスクミリンゴガイの防除法の一つとして石灰窒素の散布が有効である。移植栽培では散布後に薬害発生期間を避けて移植することで食害を軽減させる防除技術が確立されているが、湛水直播栽培ではまだ確立されていない。そこで、石灰窒素のスクミリンゴガイ防除に効果的とされている散布量での籾の出芽性をポット試験で解析し、防除技術開発のための基礎資料を得る。

成果の内容・特徴

  • 播種後14日目の最終出芽率について見ると、無被覆籾は石灰窒素の散布量が多くなると顕著に低下するが、酸素発生剤を乾籾重の2倍量被覆した籾は散布量にかかわらず高い値を示し、散布量が多くなると若干高まる(図1)。
  • 出芽の速さを示す平均出芽日数(出芽した全ての籾の出芽までの日数の平均)を見ると無被覆籾では散布量が多くなると長くなり出芽が遅れるが、酸素発生剤被覆籾は散布量にかかわらず短い(図2)。
  • 麦稈および石灰窒素の散布による播種後14日目の最終出芽率を見ると、無被覆籾では麦稈および石灰窒素を散布した試験区では低くなる。これに対して酸素発生剤被覆籾では麦稈、石灰窒素の散布にかかわらず高い値を示す(図3、図4)。

成果の活用面・留意点

  • 殺貝に必要な石灰窒素量は窒素量4~6g/m2である(九州農業研究成果情報第13号平成10年7月p19-20)。石灰窒素散布後は殺貝期間として48時間の湛水状態を維持する。
  • 本試験は細粒灰色低地土を使用したが、土壌特性による差には留意する必要がある。
  • 試験には全窒素含量10.6%、そのうちシアナミド態窒素を9.2%含有する粒状複合石灰窒素肥料(試供品)を用いたが、市販の粒状石灰窒素であっても同様の結果が得られる。
  • 湛水水稲直播栽培におけるスクミリンゴガイ防除技術開発のための基礎的情報として、圃場での実証試験等に活用する。

具体的データ

 

図1. 図2 石灰窒素散布量と平均出芽日数

 

図3 石灰窒素散布量と麦稈施用量が無被覆籾の最終出芽率に与える影響 図4 石灰窒素散布量と麦稈施用量が酸素発生剤被覆籾の最終出芽率に与える影響

その他

  • 研究課題名:稲・麦の省力二毛作技術の体系化
  • 予算区分:地域総合
  • 研究期間:平成12年度(平成9~12年)