ザルコトキシン遺伝子導入によるイネへの白葉枯病抵抗性の付与
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要約
イネ品種日本晴、どんとこい、ヒノヒカリにザルコトキシンIA遺伝子を導入し、固定した系統を得た。導入遺伝子産物を安定に発現する系統には白葉枯病菌に対する抵抗性が付与されている。
- 担当:中国農業試験場・作物開発部・育種工学研究室
- 連絡先:0849-23-4100
- 部会名:生物資源・生物工学近畿中国・生物工学
- 専門:バイテク
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
ザルコトキシンIA(S1A)は病原微生物の細胞膜に作用し抗菌性を呈する39アミノ酸残基からなる昆虫由来のペプチドである。この抗菌性ペプチド遺伝子をイネへ導入し既存の抵抗性遺伝子とは別の作用機作による白葉枯病菌抵抗性を付与することにより、イネ病害抵抗性育種のための新手法を提供する。
成果の内容・特徴
- イネにザルコトキシン遺伝子を導入するため、細胞外分泌のためのタバコPR1aシグナルペプチドおよび高発現プロモータを含む形質転換ベクターを構築した。
- イネ品種「日本晴」・「どんとこい」・「ヒノヒカリ」を材料として、導入遺伝子について遺伝的に固定した形質転換系統を育成し、出穂期の止葉に対する剪葉接種法によって白葉枯病菌に対する抵抗性検定を行った。いくつかの系統はI群菌およびII群菌に対して原品種と比べてより強い抵抗性を示した(表1・図1).
- 抵抗性の強弱は葉組織における導入遺伝子産物の蓄積量と密接に関連している(図2)。強い抵抗性を呈するためには一定量以上のザルコトキシンの蓄積が必要であるが、そのような系統は茎長、穂長が減少し、やや弱勢である(表1,図3)。
成果の活用面・留意点
農業形質に対する影響低減を図るためには、誘導性プロモータの利用などを考慮する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:抗菌性ペプチド遺伝子を利用した耐病性形質転換体の作出
- 予算区分 :経常・バイテク(組換え・クローン)研究期間 :平成12年度(平成9~(11)~12年度)
- 研究担当者:福岡浩之、矢野 博
- 発表論文等:ザルコトキシンIA遺伝子導入イネの白葉枯病菌に対する抵抗性、
福岡浩之・池田達哉・光原一朗・矢野博・名取俊二・大橋祐子、育種学研究3巻別1、2001.