大麦の加熱褐変に関係する穀粒中のポリフェノール含量の品種間差異
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要約
大麦の加熱褐変に関係する穀粒中のポリフェノール含量は、0.19~0.75mg/gの品種間差異があり、日本や朝鮮半島の裸麦品種のポリフェノール含量が低い。低ポリフェノール遺伝資源には、プロアントシアニジンフリー突然変異と異なる在来種が含まれる。
- 担当:四国農業試験場作物開発部資源作物育種研究室
- 連絡先:0877-62-0800
- 部会名:水田畑作物
- 専門:育種
- 対象:麦類
- 分類:研究
背景・ねらい
大麦を加工調理する場合、麦飯や麺類にみられるように加熱処理によって褐変し、外観が悪くなることが問題点の一つである。この加熱による褐変は、主に穀粒中に含まれるポリフェノールによるものと考えられることから、加熱による褐変の少ない裸麦品種育成のため、穀粒中のポリフェノール含量の品種間差異を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 搗精麦の炊飯後白度は、ポリフェノール含量と高い負の相関関係にある(図1)。
- 大麦約1400品種を調査した結果、55%搗精(裸麦は60%)した穀粒のポリフェノール含量は、0.19~0.75mg/gと3倍以上の品種間差異があり、図2のような分布を示す。
- 地域別には、朝鮮半島と日本の裸麦品種のポリフェノール含量が低く、従来知られているプロアントシアニジンフリー突然変異並の低ポリフェノール遺伝資源が存在する(表1)。
- 最もポリフェノール含量が低かった5在来種(0.27mg/g以下,収集番号SV158, SV251, NI260, NI411, NI462)をHPLC分析した結果、カテキンやプロデルフィニジンB3などのプロアントシアニジンが検出され、これらの品種はプロアントシアニジンフリー突然変異と異なる低ポリフェノール遺伝資源と考えられる。
成果の活用面・留意点
- ポリフェノールに関する品質育種の基礎データとして活用する。
- 低ポリフェノール遺伝資源を、交配母本として利用できる。
- 本成果はポリフェノール含量の測定に基づくものであり、新規遺伝資源の加熱褐変は未確認である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:裸麦の早生耐倒伏良質多収品種の育成(経常)・もち性等高品質裸麦品種の育成(麦緊急開発)
- 予算区分:経常・麦緊急開発
- 研究期間:平成12年度(平成8年~11年)
- 研究担当者名:藤田雅也・武田和義(岡大資生研)・神山紀子(品質評価研)・土井芳憲・松中仁
- 発表論文等: オオムギにおける穀粒の加熱褐変とポリフェノール含量の品種間差異、四国農試報、第65号