遊休農地の放牧及び牧乾草生産の経営経済性

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要約

野草植生の遊休農地への繁殖牛の放牧飼養及び小型機械体系による牧乾草の確保は、肉用牛経営の省力化、所得増加など顕著な経営改善を可能にする。また、放牧等の畜産利用は中山間地域の農用地の経済的価値を高める。

  • 担当:中国農業試験場・総合研究部・総合研究第2チーム
  • 連絡先:0854-82-0864
  • 部会名:営農、畜産
  • 専門:経営
  • 対象:家畜類
  • 分類:普及

背景・ねらい

中国中山間地域で一般的な肉用牛飼養(兼業形態、野草採草による繁殖牛4頭の周年舎飼)を対象に、遊休農地への放牧導入及び放牧と小型機械体系(小型ロータリーモアと自走式ロールベーラー使用の収穫)による牧乾草生産を組み合わせた飼養体系導入の経済性について試算・評価を行う。あわせて農用地の畜産利用の経済性を検討する。

成果の内容・特徴

  • 繁殖牛飼養及び粗飼料の確保を、遊休農地への放牧及び小型機械体系によるイタリアンライグラス-イヌビエの乾草生産に置き換えた場合の労働時間、経費、所得への影響について、季節放牧(7ヶ月間)に必要な面積を42a/頭とし、表1に掲げた前提条件をもとに試算した。
  • 4頭の繁殖牛を7ヶ月間放牧飼養した場合、労働時間は周年舎飼時の1585時間から925時間に節減され、所得は57万円から69万円に増加する。また、5月~10月の労働時間は1304時間から670時間に減少するなど、労働の季節偏在の緩和や労働生産性の向上等肉用牛経営の改善が図れる(表2)。
  • 放牧導入により節減された労働を、1585時間を越えない範囲で飼養規模拡大に向けた場合、繁殖牛6頭まで増頭が可能である。さらに、牧乾草生産を導入し、冬期の繁殖牛及び子牛の粗飼料確保の省力化を図ると、放牧地378a、牧草地45a以上を確保すれば繁殖牛9頭まで増頭が可能であり、畜産所得は約140万円に増加することが期待される(表2)。
  • 遊休農地を放牧及び牧草生産に利用した肉用子牛生産による土地利用の経済性を水稲作等と比較すると、土地純収益が水稲作を上回る等、放牧等の畜産利用は遊休農地に限らず中山間地域の農用地の経済的価値を高める(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 中山間地域の土地利用及び肉用牛経営の改善を進めるための指針となる。
  • 放牧開始時に草地造成等の投資を伴わないこと、繁殖牛の季節分娩が前提である。また、増頭に伴う施設構造・飼料給与体系は変化しないものとする。

具体的データ

表1.繁殖牛及び子牛1頭当たり飼料給与量とその確保に要する労働と経費

 

表2.遊休農地の放牧及び牧乾草生産導入による肉用牛繁殖経営の変化

 

表3.中山間地域における農用地利用の経済性比較

 

その他

  • 研究課題名:遊休農林地を活用した子牛生産技術の経営評価
  • 予算区分:地域総合
  • 研究期間:平成12年度(平成10~14年)
  • 研究担当者:千田雅之、小山信明、谷本保幸、佐藤節郎
  • 発表論文等:肉用牛繁殖経営における農作業時間と里山放牧による変化、中国農試農業経営研究、第128号、47~78、2000.