中国中山間地域農村における社会関係と地域農業の組織的対応のための指針

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要約

地域農業の組織的対応として、ネットワーク的住民結合が優越する地域では「機能集団」的地域営農・生活組織、地縁に基づく住民の生活結合が優越する地域では「共同組織」的地域営農・生活組織が適合する。

  • 担当:中国農業試験場・総合研究部・経営管理研究室
  • 連絡先:0849-23-4100
  • 部会名:営農
  • 専門:経営
  • 分類:指導

背景・ねらい

中山間地域における地域農業の維持には地域農業組織化が不可欠である。その組織化・運営の様態は地域の社会関係の個性に規定される。本研究では中国地域における社会関係の地域的多様性を整理し、それぞれに適合する地域農業の組織的対応の指針を提示する。

成果の内容・特徴

  • 中国地域農村には伝統的な社会関係の地域性が存在していた。それぞれの地域性に該当する3つの農村において調査を行った結果、現在でも伝統的な社会関係に連続する形で農村社会関係の地域的個性が存在する(表1)。すなわち、
    • 農村A:目的的「講」関係が優越(伝統)→広域のネットワーク的住民結合(現状)
    • 農村B:地縁的「組」関係が優越(伝統)→地縁に基づく住民の生活結合(現状)
    • 農村C:統合的タテ秩序の関係が優越(伝統)→住民結合の契機希薄化(現状)
  • 農村社会関係の地域性は地域農業の組織化をするうえでの地域的条件として、適合する地域営農・生活組織のタイプを規定している(図1・図2)。
    • 農村A:[組織の性格]農産物加工・特定農産物生産・イベント等、特定の目的達成を組織目的とした「機能集団」的地域営農・生活組織。[組織構成]リーダーを中心とした有志のネットワーク。[組織運営]各個人・家の自由な裁量を保障する組織運営。
    • 農村B:[組織の性格]基礎集団の発展存続を目的とし、多様な役割を担う「共同組織」的地域営農・生活組織。[組織構成]地縁社会全戸による構成。[組織運営]各個人・家・組の紐帯と平等原理を尊重する組織運営。
    • 農村C:[社会関係の性格]農村社会内部に複雑な緊張関係が存在。[必要な対応]公的機関や法人による農地保全等の地域農業維持のための仕組み作りが必要である。

成果の活用面・留意点

  • 地域農業の組織化と組織運営を図る際の基礎的基本的な指針として利用できる。
  • 農村Aタイプにおいては、目的ごとに林立する「機能集団」的組織の活動を、全体としてマネジメントできるような行政村レベルでのコーディネートが必要。
  • 農村Bタイプの「共同組織」的組織は永続的活動が可能であるが、活動の積極的推進・展開に向けての動機付けが重要。

具体的データ

図1.地域営業・生活組織モデル(農村A)

 

図2.地域営業・生活組織モデル(農村B)

 

その他

  • 研究課題名:集落内社会集団の機能と地域営農集団の組織化・運営に関する研究
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成12年度(平成10~12年)
  • 研究担当者:山下裕作
  • 発表論文等:中国中山間地域の組織・制度的地域資源の地域的個性と機能、
                     地域営農集団・地域おこし集団との関連から、農業経営通信、198、1998.12
                     中国中山間地域農村における伝統的社会集団と地域営農・生活組織、山陰民俗研究、7、
                     2001.3(印刷中)