ソイルセメントによる小規模法面保全技術

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要約

本技術は、傾斜地耕作道圃場法面の侵食や小規模な崩壊を修復するための技術である。施工方法は、現地土にセメントを混合して流動状のソイルセメントを作り、あらかじめ設置した型枠に流し込むことで、法面を保全する構造物が出来る。

  • 担当:四国農業試験場・地域基盤研究部・上席研究官
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:傾斜地農業
  • 専門:農地防災・保全
  • 対象:農業工学
  • 分類:普及

背景・ねらい

中山間傾斜地では、毎年のように豪雨による農道、圃場などの法面が崩壊しているが、特に小規模な法面では、わずかな豪雨でも侵食を受ける。復旧工事は、基準に従って行われているが、耕作道などの小規模な法面の修復は、農家が行うことが多い。このため、農家でも行えるように法面保全技術として開発したものである。

成果の内容・特徴

  • 対象となる法面は、高さが2m以上になると施工が困難になるため、法面を保全する構造物は高さを2m以下、厚さ0.2m以上とする。地山の勾配が急な場合と緩い場合の2種類のタイプを想定している(図1)。
  • 施工方法は図2に示す。ソイルセメントは、現地土とポルトランドセメント(以後セメントという)、水を混合して作る。この場合、セメントは20%程度、水は現地土の水分状態によって決めるが30~80%程度とする。型枠は、施工後10日程度で外す。
  • ソイルセメントの強度は、細粒分の量によって変化するが、セメントを20%混合すると一軸圧縮強度で10kgf/cm2 以上の強度が得られ(図3)、また耐久性もあり(図4)侵食に対する法面保全に有効である。
  • ソイルセメントを施工した直後の法面からの流水はアルカリ性を示すが、1か月後(pHは8.3~7.2)には中性に近くなり、作物への影響は少ない。

成果の活用面・留意点

  • 現地土が、有機物が多かったり、粘土の成分によってセメントで固まらない場合があるため、計画時に使用すると土とセメントを混合して固めて確認する。
  • 型枠は、木材等で現地に合わせて作るが、急速に施工するときには土圧で破壊することがある。施工は時間をかけて行うか、型枠を強固にする。
  • この技術は、凍結による耐久性を十分に検討していないため、適用範囲は西日本地域とする。

具体的データ

図1.ソイルセメントによる法面保全技術例

 

 

図2.施工フローチャート

 

図3.細粒分含有量と一軸圧縮強度

 

図4.供試体耐久試験結果

 

その他

  • 研究課題名:農耕地と周辺部の一体的保全・管理法の策定-ソイルセメントによる小規模法面整備技術-
  • 予算区分:総合研究(地域総合)
  • 研究期間:平成12年度(11~13(12)年)
  • 研究担当者:山下恒雄
  • 発表論文等:ソイルセメントによる小規模法面保全技術、平成12年度農土学会中国四国支部大会講演要旨、
                    p116~118、2000.11