温暖地中山間地域向け小麦新品種「中国143号」
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要約
小麦新品種「中国143号」は、やや早生、やや短稈で耐倒伏性が強く、多収で、収量と外観品質の安定性が高い。製粉歩留が高く、粉の色相が明るく製麺適性が高いが、タンパク質含有率はやや低い。温暖地の中山間地域に適する。
- キーワード:小麦、品種、中国143号、多収、製粉、製麺、中山間
- 担当:近中四農研・作物開発部・小麦育種研究室
- 連絡先:0849-23-4100
- 区分:近畿中国四国農業・作物生産
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
広島県や岡山県をはじめとする近畿中国の中山間地域においては、これまで小麦はほとんど作付されていなかったが、転作の強化と麦大豆の本作化に加えて、地場産品志向と地域活性化の気運の高まりにより、地元でとれた小麦を自ら加工販売して地域の活性化に結びつける動きが活発化している。しかしながら広島県・岡山県の現奨励品種である「シラサギコムギ」は長稈で倒伏しやすく収量も低いことから、中山間地域に適した栽培特性を持ち、製粉・製麺適性の優れた品種が求められている。
成果の内容・特徴
「中国143号」は早生・良質・多収を育種目標として、1983年4月に中国農試において、母「中系5165」×父「シロガネコムギ」の交配により系統育種法で育成され、2001年9月に品種名「中国143号」として品種登録出願された。その特徴は次のとおりである。
- 播性I、やや早生、やや短稈で耐倒伏性が強く、中山間地域においても早熟・多収で、収量と外観品質の安定性が高い、白ふ褐粒の品種である(表1、2)。
- 製粉歩留が高く、粉の色相が明るく、麺の色と粘弾性が優れ製麺適性が高い。アミロース含有率は農林61号並である(表2)。
- タンパク質含有率がやや低いが、中山間地域においては一般的にタンパク質含有率が高くなりがちであるため、中山間地域においては適正値になりやすい。
成果の活用面・留意点
- 近畿中国の積雪が少ない中山間地域(積雪期間1ヶ月以下、標高500m以下)において活用できる。
- 普及見込み面積が小さいため域内消費を基本とし、販売方策に留意する必要がある。
- 赤かび病、赤さび病にやや弱いため、適切な防除が必要である。
- 子実タンパク質含有率が低くなりがちな地域・圃場においては、晩期追肥によりタンパク質含有率の適正化を図る。
具体的データ


その他
- 研究課題名:小麦の高品質・早生・多収品種の育成
- 予算区分:経常
- 研究期間:1982~2000年度
- 研究担当者:石川直幸、長嶺敬、髙山敏之、田谷省三、甲斐由美、谷尾昌彦、佐藤淳一、村上泰臣、住田哲也、
江口昭彦、波止博明
- 発表論文等:品種登録出願番号 第13889号(2001年9月28日出願)