遊休棚田の山羊を使った土壌保全的雑草管理・利用技術

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

遊休化した棚田に山羊放牧技術を導入することにより、土壌を保全しながら植生を管理することができ、遊休地を利用した果樹や小家畜等の生産も可能となる。

  • キーワード:遊休棚田、雑草管理、土壌保全、山羊
  • 担当:近中四農研・総合研究部・総合研究第3チーム
  • 連絡先:0877-63-8116
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

四国山間傾斜地域では農地の遊休化が進行し、その抑制と発生した遊休地の管理のための対策が急務である。遊休化した棚田は小区画で急傾斜の法面を含み、多様な雑草・灌木が急速に繁茂するが、農村の高齢化と労働力不足のため、省力的な管理技術の確立が求められている。そこで山羊の放牧による雑草管理技術を導入することにより、土壌を保全しながら植生管理を省力的に行うとともに、遊休棚田を利用した新たな生産技術体系を構築する。

成果の内容・特徴

  • 遊休後数年経過し、ススキ・クズ等の強勢雑草が優占、繁茂した棚田・法面においては、多頭数(7~8頭/10a)での放牧を1カ月程度行い、その後、少頭数(1~2頭)での放牧を継続することにより、雑草量は低減し、低草高の状態で安定的に維持できる。(図1)
  • 遊休棚田に山羊を放牧すると、遊休状態に比べ表層土壌の緻密化、透水性の低下等の物理性や、栄養塩類の増加等の化学性の変化が起きるが、作物の栽培に障害となる程の変化はなく、再び農地として利用できる。(表1)
  • 山羊の放牧管理における施設設計・設置、衛生、繁殖、飼養等の方法についての管理マニュアルを作成した。(表2)

成果の活用面・留意点

  • 10アールあたり1~2頭で管理された遊休棚田は、粗放管理可能な果樹や花木を植栽する園芸的な利用や、仔山羊販売や鶏の放飼いなどの畜産的な利用ができる。(図2)
  • 牛に比べ小面積、急傾斜の遊休地で特に適用性が優れる。
  • 本技術は四国以外にも適用できるが、地域により雑草の植生、生育速度などが異なるので、放牧圧は適正に調整する。
  • 果樹、花木を植栽する場合は、山羊による食害防止のため、周囲に柵を設置する。
  • 山羊管理マニュアルは、近中四農研センター「遊休農地の管理・利用と山羊飼養マニュアル」として発行される。

具体的データ

図1 山羊放牧による遊休棚田の雑草量の推移 図2 遊休棚田での果樹の植栽と鶏等の飼育の様子

 

表1 耕作棚田、遊休棚田、放牧棚田の土壌の物理・化学性

 

表2 山羊管理マニュアルの一部( 年間スケジュール)

 

その他

  • 研究課題名:農耕地と周辺部の一体的保全・管理法の策定
  • 予算区分:傾斜地野菜・花き
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:的場和弘、吉川省子、野中瑞生、川嶋浩樹、長崎裕司
  • 発表論文等:1)吉川ら (1999)畜産の研究53(10) 48-53
                      2)的場ら (2001)雑草研究46(別) 236-237