長大地すべり斜面における農地防災対策の配置決定技術

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要約

有限要素法を用い、通常の手法では境界条件の設定が難しい長大地すべり斜面で、地下水流動予測を行える。この結果をもとに、混合型すべりを考慮した高精度の地すべり危険度評価(破壊予測)を行い、傾斜地域における集水井等の農地防災対策の配置を決定できる。

  • キーワード:傾斜地域、地すべり斜面、防災対策、有限要素法
  • 担当:近中四農研・傾斜地基盤研究部・地域防災研究室
  • 連絡先:0877-63-8120
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)
  • 分類:行政・普及

背景・ねらい

傾 斜地域は地形・地質・地下水条件に対応して地すべり等災害の潜在的な危険地域になっている。近年、老齢化等労働構造の脆弱化に伴って農地管理の粗放化が進行しつつあり、農地の荒廃が進行するとともに地すべり等災害の発生が懸念されており、合理的な防災対策の立案が求められている。そこで、長大地すべり土塊において農地被災状況を予測し、これに基づいて集水井等防災対策の配置を合理的に決定する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 有限要素法を用い、通常の手法では実測地下水位に対応した解析が難しい長大地すべり斜面において、ポテンシャル拘束型の地下水位境界条件を導入して簡易的に地下水流動予測を行える(図1)。これにより、長大斜面の各部に交錯して現れる地下水の流入・流出箇所を容易に評価できる。
  • 地すべり地現地で採取した試料の実測結果をもとにして地すべり崩土内部における進行的な破壊を精度良く予測し(図2)、過去の地すべりの履歴も考慮した混合型すべりを再現しながら長大地すべり斜面の変形を予測できる(図3)。
  • 地下水流動予測結果で求めた浸透力を用いて、地すべり長大斜面における斜面の破壊領域を予測できる。破壊域(すべり面)は地すべり冠頭部の地下水流入域周辺に現れている。集水井等地下水排除工はこの領域の周辺に配置すべきである(図4)。長大地すべり斜面の中で重点的に対策工を配置すべき領域を合理的に決定する事が可能になる。

成果の活用面・留意点

  • すべり面深度10m 以浅の第三紀層長大地すべり土塊において合理的な対策工の配置を決定できる。
  • 四国地域に特徴的な結晶片岩地帯の大規模地すべりは急峻傾斜地に発生しており、このタイプの農地防災管理に適用できるかは不明の点が多く、今後この点を明らかにする必要がある。

具体的データ

図1 地下水流動予測

 

図2 破壊予測(要素試験) 図3 破壊予測(地すべり斜面)

 

図4 長大土塊におけるすべり面発生予測

その他

  • 研究課題名:地すべり地防災・活用型対策技術の開発
  • 予算区分:依頼(農林水産省農村振興局)
  • 研究期間:1997 ~2001 年度
  • 研究担当者:川本治、島崎昌彦、吉迫宏、中尾誠司
  • 発表論文等:1)川本治:混合型すべりモデルによる地すべり斜面の安定解析、地すべり(日本地すべり学会誌)、
                         Vol.38,No.3,pp.187 ~194(2001)