タマゴバチ放飼と被覆資材併用によるコナガの防除
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要約
施設栽培アブラナ科野菜のコナガに対して、卵寄生蜂タマゴバチと被覆資材(べたがけ)の併用で密度を抑制することが可能である。
- キーワード:コナガ、タマゴバチ、被覆資材、べたがけ
- 担当:近中四農研・地域基盤研究部・虫害研究室
- 連絡先:0849-23-4100
- 区分:近畿中国四国農業・生産環境、共通基盤・病害虫
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
アブラナ科野菜の重要害虫としてアブラムシ類、コナガ、ハスモンヨトウ、ヨトウガ、モンシロチョウなどが知られている。被覆資材はアブラナ科野菜における上記害虫による被害軽減に有効である。しかし、コナガに対しては他の害虫に比べ幼虫等の侵入により十分な防除効果が得られない。そこで、コナガの天敵タマゴバチと被覆資材の組み合によるコナガの防除効果を検討する。
成果の内容・特徴
- 両端を被覆資材(サンサンネットN-2000、タフベル3000N、ワリフHS、パオパオ90R)で覆った両切りガラス管の中にコナガ卵を入れる。4本を一緒にプラスチック容器に入れタマゴバチを放飼する。各被覆資材で覆われたコナガ卵に対して70%以上の寄生率が認められることから、タマゴバチは被覆資材を通過し、コナガ卵に産卵可能である。
- ビニールハウス(面積38.7m2)のシロナ(実験1・2)(品種:タキイ大晩生しろな)・キャベツ(実験3)(品種:四季穫)に被覆資材(サンサンネットN-2000)(べたがけ)の有無とタマゴバチ放飼の有無により4区(タマゴバチ放飼裸畝区、タマゴバチ放飼べたがけ区、無放飼べたがけ区、無放飼裸畝区)をつくり、コナガとタマゴバチを表1の条件で放飼する。べたがけはコナガの侵入をある程度抑制する効果は認められるが、完全にコナガ成虫の侵入を抑える防除資材ではない(図1)。
- タマゴバチは寄主卵に産卵して寄主を殺すため、タマゴバチによる防除効果はコナガの若齢幼虫数で判断できる。タマゴバチ放飼べたがけ区とタマゴバチ放飼裸畝区においてコナガ幼虫はほとんど認められない(図2)。また、タマゴバチの寄生による黒化卵も確認される。
- 以上の結果から、べたがけの利用においてはタマゴバチと併用することによりコナガに対する高い防除効果が得られる。
成果の活用面・留意点
- べたがけはアブラナ科野菜の各種害虫に対する防除効果が優れており、さらに、防除効果がやや劣るコナガに対しては比較的少量のタマゴバチを併用することにより、防除効果を高めることができる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:寄生性天敵・べたがけ利用を核としたコナガの総合防除技術の確立
- 予算区分:IPM
- 研究期間:1999~2001年度
- 研究担当者:三浦一芸、太田泉、大泰司誠、田中寛(大阪農林技術センター)、柴尾学(大阪農林技術センター)
- 発表論文等:三浦一芸・太田泉・田中寛・柴尾学(2001) 応動昆 45: 151-155.
三浦一芸・田中寛(2001) 今月の農業 (12):65-69.