ヘアリーベッチすき込みによる水稲の環境保全型栽培法
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要約
マメ科植物のヘアリーベッチを、田植え前にすき込んで水稲を栽培すると、雑草発生が抑制され、無除草剤、無化学肥料で慣行栽培と同等の収量、品質が得られる。
- キーワード:ヘアリーベッチ、水稲、雑草抑制、無除草剤、無化学肥料
- 担当:近中四農研・傾斜地基盤部・資源利用研究室
- 連絡先:0877-63-8121
- 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌)、共通基盤・土壌肥料
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
四国中山間の棚田地帯では、農家人口の激減と高齢化により、地域の活力が低下している。また最近、水田土壌中における除草剤起源のダイオキシン残留が明らかになり、無農薬米に対する消費者ニーズが高まっている。そこで、マメ科植物のヘアリーベッチ(以下ベッチ)の抑草作用と窒素固定作用を利用し、除草剤や化学肥料を使わない、高付加価値米の生産技術を開発し、地域の活性化に役立てようとした。
成果の内容・特徴
- ベッチは、前年10月に播種し、翌年4月から5月にかけてすき込む。すき込み後は、3日以内に入水し、14日以内に田植えを行う(入水後6日以上あける)(図1)。収穫まで化学肥料及び除草剤は使用しない。
- ベッチの雑草抑制効果は、すき込みから3日以内に入水すると、その後2週間は持続する。しかし、すき込んでしばらく放置した後に入水すると、効果が低下する(図2)(表1)。
- ベッチの5月初旬での乾物生産量は400-800kg/10a、窒素含有率は3.1%であり、窒素無機化率は60%であるので(文献値)、窒素供給力は、約7-15kg/10aと推定した。
- ベッチすき込み法は、雑草を完全に抑制するわけではないが、慣行栽培(農薬・化学肥料使用)とほぼ同等の収量、品質(玄米窒素%)が得られる(表1)。
成果の活用面・留意点
- ベッチは湿害に弱いので、播種は土が乾いている時に行い、排水溝(明渠)を切る。覆土をしないと発芽率が落ちる。
- ベッチに直接ロータリーをかけると、ベッチのつるが刃にからみついて機械を傷めるので、モーアであらかじめ刈ってからすき込む。
- 入水後、くさい臭いやガス沸きがない場合は、抑草効果が低いと判断できる。
- ベッチ区の雑草は、コナギが主でヒエなどのイネ科雑草は見られなかった。
具体的データ



その他
- 研究課題名:植物資源活用による遊休・放棄農耕地の管理と利用
- 予算区分:傾斜地野菜・花き
- 研究期間:1998~2001年度
- 研究担当者:村上敏文、吉田正則、花野義雄、藤原伸介、森昭憲
- 発表論文等:藤原ら1999雑草研究(別)44、208-209