シバ型草地放牧の季節別の採食草種、飼料成分およびin vitro 消化率

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要約

シバ型草地放牧時の推定採食草種は全123種で、うち29種が季節を通して共通し、採食量中69~82%を占め、シバの採食割合は37~51%である。夏は採食量が低下し、秋の採食草は、粗蛋白質含量とin vitro 乾物消化率が低下し、NDF含量が増加する。

  • キーワード:動物栄養、肉用牛、シバ型草地、採食草種、シバ、飼料成分、in vitro 消化率
  • 担当:近中四農研・畜産草地部・栄養生理研究室
  • 連絡先:0854-82-1670
  • 区分:近畿中国四国農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

近畿中国四国地方の中山間地域の里山や遊休農林地では、基幹草種としてシバの定着を図りつつ、周辺の野草地等を放牧地に取り入れて、肉用繁殖牛を飼養する場合がみられる。このような放牧牛への栄養供給を解明するために、シバ型草地1.2ha、野草地2.0ha,林地1.1haからなる4.3haの草地(近中四農研畜産草地部:島根県大田市)に、無施肥、補助飼料無給与で黒毛和種繁殖牛3頭を春~秋に定置放牧し、放牧牛の採食草種と飼料成分および消化性について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 乾物草量は春(5月)94g/m2、夏(7月)98g/m2、秋(9月)94g/m2とほぼ一定である。
  • シバの採食割合は37~51%と各季節の中で最も多く、春秋は草地の現存割合と同程度であったが、夏は現存割合よりも低い(表1)。シバおよびスゲ類はともに春のin vitro 乾物消化率が夏秋と比較して高く、シバは夏のCP含量が低い。また、枯死部の採食割合が季節進行に伴い増加する。
  • 模擬採食法により推定した採食草種数は、春65種、夏68種、秋64種で全123種である(図1)。そのうち29種が春夏秋に共通し、採食量中春82%、夏78%、秋69%と大部分を占める。
  • 1日の採食時間は、春が8.3時間、夏が7.4時間、秋が10.5時間であり、推定乾物摂取量は、春が6.1kg、夏が3.6kg、秋が8.0kgであり(表2)、夏は採食が低下し、主に暑熱の影響が推察される。
  • 採食草全体の飼料成分は、秋にCP含量が低下する一方、繊維成分が増加する(表2)。また主要草種の各in vitro 乾物消化率の低下、枯死部の増加により(表1)、in vitro 乾物消化率が低下する(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 暑熱や飼料品質低下により栄養摂取量低下が推察される夏以降の補助飼料給与のための有効な知見となる。
  • 秋の採食草の飼料品質低下は、9月時点であるので、10月以降はさらなる低下が見込まれる。

具体的データ

表1.主要採食草種の飼料成分およびin vitro 乾物消化率

 

図1 . 季節別採食草種数表2.季節別の採食量、採食飼料成分および消化率

その他

  • 研究課題名:シバ型草地における繁殖牛の栄養バランスの解明と補給技術
  • 予算区分:畜産対応研究(自給飼料基盤)
  • 研究期間:1998~2000年度
  • 研究担当者:小迫孝実、小倉振一郎、林 義朗、土肥宏志、早坂貴代史、西口靖彦、安藤 貞
  • 発表論文等:1)小迫ら (1998) 日本草地学会誌 44(別号):352-353.
                      2)Kosako et al. (1999) Proceedings of the International Workshop on Conservation and Utilization of
                         Land Resources in Less favored Areas with Special Emphasis on The Roles of Livestock and
                         Technology.108-113.