黒毛和種去勢牛の肥育全期間における濃厚飼料制限給与による赤肉生産

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要約

黒毛和種去勢牛に給与する濃厚飼料の原物量を肥育全期間において体重の1%に相当する量に制限すると、体重および枝肉重量は小さくなるが、生産される赤肉の量は変わらない。

  • キーワード:飼育管理、肉用牛、黒毛和種、肥育、濃厚飼料、制限給与、赤肉生産
  • 担当:近中四農研・畜産草地部・産肉利用研究室
  • 連絡先:0854-82-2047
  • 区分:近畿中国四国農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

一般に黒毛和種去勢牛の肥育では脂肪交雑を多くする目的で濃厚飼料の多給が行われている。しかし、最近の消費者の牛肉に対する考え方は完全な脂肪交雑重視ではなく、脂肪交雑が多い牛肉を好む消費者と赤身が多い牛肉を好む消費者に二極化している。また、今後は自給粗飼料や地域資源を積極的に活用した肥育を行っていく必要がある。これまでに育成期および肥育前期において濃厚飼料の給与量を節減する肥育技術については数多く報告されているが、肥育全期間において濃厚飼料の給与量を節減する肥育技術については報告されていない。そこで、赤肉の生産性の向上および濃厚飼料給与量の大幅な節減を目的とした肥育技術を開発するため、肥育全期間における濃厚飼料の制限給与が黒毛和種去勢牛の産肉性に及ぼす影響を検討する。

成果の内容・特徴

  • 黒毛和種去勢牛の肥育(10~27カ月齢)で、濃厚飼料給与量を体重の1%に制限し乾燥(イタリアンライグラス)を自由採食させた場合(粗飼料区,n=4)には濃厚飼料を自由採食させる場合(濃厚飼料区,n=4)に比べ、濃厚飼料摂取量が約1,600kg少なくなる(図1)。
  • 粗飼料区は濃厚飼料区に比較して屠体重が約100kg少なくなり、また半丸枝肉重量も約40kg少なくなるが、内臓脂肪の重量は濃厚飼料区の86.6kgに比較して粗飼料区では60.7kgと少なくなり、内臓脂肪を約30%低減することができる(図2)。
  • 半丸枝肉中の筋肉(赤肉)の重量には粗飼料区と濃厚飼料区との間で差がみられない(図3)。
  • 半丸枝肉中の皮下脂肪重量は濃厚飼料区の35.8kgに比較して粗飼料区では17.5kgと少なくなり、皮下脂肪を約50%低減することができる(図3)。
  • 粗飼料区の胸最長筋(リブロースの一部)および半腱様筋(そとももの一部)の粗脂肪含量は濃厚飼料区に比較して少なくなる(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 粗飼料を積極的に利用して濃厚飼料を節約する肥育を行う場合の指標として活用される。
  • 脂肪交雑(霜降り)の多い牛肉を生産することを目的とした肥育には適用しない。

具体的データ

図1.肥育全期間における飼料摂取量 図2.屠体中の枝肉、内臓、脂肪の重量

 

図3.半丸枝肉中の筋肉、骨、脂肪の重量 図4.筋肉中の粗脂肪含量

その他

  • 研究課題名:粗飼料の給与水準が黒毛和種去勢牛の産肉性に及ぼす影響
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:1998~2000年度
  • 研究担当者:村元隆行、中西直人、相川勝弘、柴田昌宏
  • 発表論文等:1) 村元ら(2001)日本畜産学会第99回大会講演要旨:16.
                      2) 村元ら(2002)日畜会報73(1):J54-J59.