イタリアンライグラスとイヌビエを組み合わせた粗飼料生産

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要約

秋に冬作イタリアンライグラスと同時に夏作イヌビエを播種すると、合計で年間約1400kg/10aの乾物収量が得られる。翌年以降、イヌビエは自然下種により無播種で維持できる。イタリアンライグラスは早生品種を利用する。

  • キーワード:栽培、他の飼料作物類、イヌビエ、自然下種、無播種、イタリアンライグラス、早生品種
  • 担当:近中四農研・畜産草地・草地飼料作物研究室
  • 連絡先:0854-82-0144
  • 区分:共通基盤(雑草)、近畿中国四国農業、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

高齢者を担い手として狭小な耕作放棄水田を飼料畑として利用するため省力的な採草利用技術を確立する。すなわち、秋に冬作であるイタリアンライグラスと夏作として利用するイヌビエを同時に播種し、翌年以降、夏作は播種せずイタリアンライグラスのみを播種する「イタリアンライグラス+イヌビエ」体系を確立する。

成果の内容・特徴

  • 放棄後3年を経過した水田に早晩性の異なるイタリアンライグラス2品種(タチワセ(早生)およびマンモスB(中晩生))3kg/10aとイヌビエ1、2および3kg/10aを10月下旬に耕起播種し、イタリアンライグラスとイヌビエの収量を2年間調査した。イタリアンライグラス早生品種は2回、中晩生品種は1回収穫し、イヌビエは2回収穫した(図1)。
  • イヌビエ収量は前作イタリアンライグラス品種の早晩性に影響され、晩生品種跡では収量が減少する。イヌビエ収量は播種量に影響されずない。イヌビエ播種量は1kg/10aで十分である(イヌビエ千粒重:0.835g、稔実率:約10%)(図2)。
  • イヌビエは、二番草の自然下種により再生・維持できるので、初年目の秋に播種すれば、以降は播種する必要がなく、イヌビエ二番草の種子生産量は、イタリアンライグラス早生品種跡で中晩生品種跡より多くなる(図1および表1)。
  • 山陰地方では、イタリアンライグラス早生品種を5月上旬と6月上旬に、イヌビエを8月上旬と10月上旬に収穫(4回収穫)すると、年間約1400kg/10aの乾物収量が得られる(図1および2)。
  • 施肥量は、イタリアンライグラス播種時、イタリアンライグラス二番草収穫後およびイヌビエ一番草収穫後に、三要素で、それぞれ、10kg/10aずつとする。

成果の活用面・留意点

  • 「イタリアンライグラス+イヌビエ」体系に導入するイタリアンライグラス品種は早生品種とする。
  • 小規模圃場では小型モアと自走式ロールベーラーで収穫・調製ができる。
  • 本生産体系を導入した農家の堆厩肥を通じイヌビエが他圃場で雑草化する可能性があるので、堆厩肥は完熟することが望ましい。
  • 耕作放棄水田跡ではイヌビエ草地にカヤツリグサ類が発生し問題となる可能性がある。

具体的データ

図1.イタリアンライグラス+イヌビエ体系の作業ス 表1.イヌビエの落下種子数

 

図2.イヌビエおよびイタリアンライグラス収量

 

その他

  • 研究課題名:中山間地域における狭小放棄水田の採草利用技術の確立
  • 予算区分:21世紀3系
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:佐藤節郎、森田弘彦、千田雅之、高橋佳孝、井出保行、小山信明
  • 発表論文等:1) 佐藤ら(2001)雑草研究 46(別)78-79.