果樹土壌病害防除のための土壌への薬液注入技術
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要約
本技術は、地中にノズルを打ち込み、圧縮空気を土中で一気に膨張させる土壌破砕処理を行った後、そのノズルを利用して薬液を注入する方法である。土壌破砕処理で生じた亀裂に沿って薬液が浸透するので、広範囲への薬剤注入が効果的に行える。
- キーワード:果樹、圧縮空気、土壌破砕、土壌病害防除、土壌注入
- 担当:近中四農研・傾斜地基盤部・機械施設研究室
- 連絡先:0877-62-0800
- 区分:近畿中国四国農業・作業技術
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
果樹は永年性作物であるため、根の病気に感染した場合、抜根または防除、治癒を行う。症状が悪化したナシの白紋羽病では、広い範囲に薬液を施用するため、発病樹の根を掘り出して露出させ、根を洗うように大量の薬液で浸漬する。この薬液施用作業は、根を傷めないために人力で行うが、大量の土を堀り上げ埋め戻す重労働で、現状では1日に数本の樹しか処理できないため、軽作業化が求められている。そこで、広範囲の土壌に薬液を効果的に浸透させる注入技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 本技術は、土中に打ち込んだ1本のノズルを利用して、圧縮空気による土壌破砕処理と果樹の土中病害を防除する薬液の土壌注入を同時に行う薬液注入技術である(図1,2)。作業手順は、土中にノズルを打ち込み、圧縮空気による土壌破砕を行い、ノズルを抜き取らずに動力噴霧機から送られる薬液を注入する。本技術には、空気打ち込みノズルに薬液ホースを取り付け、自動昇降機能を解除した空気式土壌改良機(F社製CB412)が利用できる。
- ノズルから注入された薬液は、土中に生じた亀裂に沿って、土壌破砕領域に浸透する。圧縮空気による土壌破砕領域はノズル先端を底としたすり鉢状となり、その破砕範囲は、土壌物性の違いによって変化するが、圧縮空気を膨張させた際に生じる地表面の盛り上がりの範囲と一致する(図3)。すなわち、個々の圃場で土壌破砕による地表面の盛り上がり範囲を把握し、ノズルの打ち込み間隔を決定する。
- 薬液注入により空隙を液で満たし、再び圧縮空気を打ち込むと、土壌破砕領域が広まる。この圧縮空気の2度打ち込みを行うことにより、ノズル1穴からの薬液注入範囲が広がり、作業時間の短縮が図られる。
- 本方式によるナシ白紋羽病の防除作業は、1樹当たりの作業時間が7分程度と省力的で、作業強度は中労働であった(表1)。
成果の活用面・留意点
- 本方法は、土中に薬液を注入する技術であるので、施用する薬剤の効果に関しては薬剤の製造元に確認すること。
- 薬液の注入時間は、1樹当たりに使用する全液量を基に、動力噴霧機の吐出量と1樹当たりの注入箇所数から算定される。
具体的データ


その他
- 研究課題名:傾斜樹園地における軽作業化技術の開発
- 予算区分:交付金、場内プロ
- 研究期間:1999~2001年度
- 研究担当者:角川修、猪之奥康治、岡戸敦史、田中宏明、宮崎昌宏