周年マルチ点滴かん水同時施肥法導入に必要なウンシュウミカンの価格水準

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要約

周年マルチ点滴かん水同時施肥法を導入するには、追加費用が必要になるが、その費用を償う粗収益を獲得する高品質ミカンの価格は、出荷量、高品質ミカン割合、レギュラー品価格より求められる。

  • キーワード:マルチ、点滴かん水、施肥、導入費用、価格、出荷量
  • 担当:近中四農研・総合研究部・園芸経営研究室
  • 連絡先:0877-63-8117
  • 区分:近畿中国四国農業・農業経営、果樹
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

カンキツ作経営の収益性向上のためには高価格が期待できる高品質(高糖度で良食味)ミカンの生産が重要である。周年マルチ点滴かん水同時施肥法は高品質ミカンを省力的に生産できる技術として開発されたが、この技術の導入には新たな費用が必要となる。この追加費用を償い、十分な粗収益を確保できるかどうかが新技術を導入する際の判断基準となる。そこでその粗収益を確保できる高品質ミカンがどの程度の価格を獲得すれば新技術の導入が可能か、その価格を導き出す方法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 周年マルチ点滴かん水同時施肥法を導入するためには、表1に示すように、新規導入の場合では111,609円/10a、慣行マルチ栽培からの移行の場合では74,885円/10aの追加費用が必要となる。
  • 周年マルチ点滴かん水同時施肥法の導入費用を加えた粗収益を確保できる高品質ミカンの単価は、目標粗収益(円/10a)=出荷量(kg/10a)×高品質ミカン割合×高品質ミカン価格(円/kg)+出荷量×(1-高品質ミカン割合)×レギュラー品価格(円/10a)を変形した式(表2)で求められる。
  • 香川H農協の例(表3)を用いて、周年マルチ点滴かん水同時施肥法の新規導入費用と現状粗収益(ただし、平成11年産と12年産の平均現金収入で10a当たり極早生が225.8千円、早生が256.1千円、普通が180.1千円)を償う高品質ミカンの価格水準は図1になる。高品質ミカン出荷割合が70%ならば、獲得すべきkg当たり単価は、極早生で171円(裏年)、105円(表年)、早生では141円(裏年)、123円(表年)、普通では180円(裏年)となる。したがって、H農協の特選品価格で販売できれば、表年の早生を除いて新規導入費用を償うだけでなく追加収益の獲得も可能である。
  • 目標粗収益(極早生で450千円、早生で500千円、普通で400千円)の獲得に必要な単価は、高品質ミカン出荷割合が70%ならば、極早生では240円(裏年)、151円(表年)、早生では210円(裏年)、169円(表年)、普通では272円(裏年)となる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 各々の地域や経営の粗収益、出荷量の実情に応じて計算することで、周年マルチ点滴かん水同時施肥法を導入する際の目標とすべき価格の目安が得られる。
  • 求めた価格が地域の特選品価格を上回った場合、裏年では高品質ミカン割合の向上や出荷量の増加、表年では高品質ミカン割合を高めることで目標粗収益に近づけられる。

具体的データ

表1 周年マルチ点滴かん水同時施肥の追加費用 表2 高品質ミカン価格の算出式
表3 品種別出荷量と特選品・レギュラー品価格

図1 現状粗収益と新技術導入費用を償う高品質 ミカンの価格水準図2 目標粗収益の獲得に必要な高品質ミカンの価 格水準

その他

  • 研究課題名:中山間カンキツ作新技術の経営経済的評価と営農モデルの策定
  • 予算区分:中山間カンキツ園
  • 研究期間:1998~2002年度
  • 研究担当者:関野幸二、迫田登稔、島 義史、吉川(山西)弘恭、中尾誠司、森永邦久