出穂後追肥による小麦子実タンパク質含有率とタンパク質組成の変化
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要約
低タンパク質小麦に対し、出穂10日後の速効性窒素追肥によりタンパク質含有率が追肥窒素1g/m2あたり約0.4%増加する。このときグルテンを構成するタンパク質が増加し、出穂後追肥由来窒素の低分子タンパク質への異常蓄積はない。
- キーワード:小麦、出穂後追肥、タンパク質
- 担当:近中四農研・地域基盤研究部・土壌水質研究室
- 連絡先:084-923-4100
- 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)、共通基盤・土壌肥料
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
水田転換畑で生産される小麦は子実タンパク質含有率が低くなる傾向にあるが、出穂10日後の速効性窒素の追肥により稈長の増加を招くことなくタンパク質含有率が増加する。しかし、生育後期に吸収された窒素の子実での存在形態は不明である。そこで、安定同位体窒素で標識した硫酸アンモニウムを追肥として施用し、追肥による子実タンパク質含有率と組成の変化を解明する。
成果の内容・特徴
- 前夏作が大豆、水稲および無作付けの3圃場で栽培した小麦に対し、出穂10日後に標識した速効性窒素を追肥したところ、追肥窒素は子実タンパク質に取り込まれ、前作に関わらず追肥窒素1g/m2あたりのタンパク質含有率増加は約0.4%である(図1)。
- 標識窒素の大部分は追肥後18日間で茎葉に吸収蓄積され、その後、子実へ転流する。
- 子実タンパク質を図2に示した中性塩溶液とアルコール、アルカリ溶液への溶解度の差によりアルブミン・グロブリン画分と、グルテンを構成するタンパク質であるグリアジン画分、グルテニン画分および抽出残さである不溶性画分に分画した各画分に含まれる全集積窒素の分配割合より(図3)、子実タンパク質含有率の上昇に伴い、グリアジンへの窒素分配割合が増加し、低分子タンパク質であるアルブミン・グロブリンは増加しない。
- 出穂後追肥由来窒素の子実タンパク質各画分への取り込みは、各画分への全集積窒素と同様の傾向を示し、追肥由来窒素の特定の画分への異常蓄積はない(図3)。
成果の活用面・留意点
- 生育後期の子実タンパク質含有率予測と出穂後追肥を組み合わせることにより、小麦のタンパク質含有率安定化技術として活用できる。
- この結果は中国147号および農林61号を供試して得られたものであり、追肥窒素の吸収によるタンパク質組成の変化は品種や栽培条件により異なる可能性がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:温暖地西部における土壌管理に基づいた小麦子実タンパク質含量の制御
- 予算区分:21世紀プロ1系
- 研究期間:1999~2001年度
- 研究担当者:木村秀也、山内稔
- 発表論文等:木村ら(2001)土肥誌.72:403-408.