ドップラー式超音波流速センサーによる小規模河川の簡易流量測定法

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要約

小規模河川の流量は、ドップラー式超音波流速センサーを用いることにより、簡易、確実、詳細に測定できる。

  • キーワード:小規模河川、流量、ドップラー式超音波流速センサー、簡易、確実、詳細
  • 担当:近中四農研・傾斜地基盤部・資源利用研究室
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

小規模河川(川幅10m、河岸高3m程度)の流量デ-タは、中山間農業集水域から生じる汚濁負荷量などを算定するうえで、不可欠な要素である。しかし、流量せき法、手計測流速法、水位流量法など従来の方法では、せきの設置条件や洪水タイミング、さらにはH-Qループ(水位Hと流量Qの関係が輪を描く現象)の発生などが障害となり、実測流量を得ることは必ずしも容易ではなかった。そこで、人工小水路向けに開発されたドップラー式超音波流速センサーを用いて、小規模河川の流量を、簡易、確実、詳細に測定する方法(センサー法)を提案する。

成果の内容・特徴

  • 本センサー(I社製)は、小型・軽量のため(長さ20cm、幅4cm、高さ3cm、重さ1.8kg)、河川内への容易が簡単であり、河川管理者からの設置許可が得やすい。また、観測者が河川内へ立ち入る必要がないため、洪水時の観測がより確実に行えるほか(図1)、流速から流量を算定する方式のため、H-Qループの影響が詳細に評価できる(図2)。
  • 本センサーは、流心が位置する河道中央付近に設置し、ステンレスチェーンによって川岸に固定する(図1)。そして、センサー設置点の深さ方向平均流速Vs(m/s)を、30分に1回の頻度で自動測定する。
  • 今回観測を行った小規模河川では、Vsと流水横断面平均流速Vm(m/s)のあいだにつぎの関係が認められた(図3)。
    Vm=0.344Vs+0.121Vs2 (r2=0.938) [1]
    したがって、センサー法による流量Qs(m3/s)は、[1]式に流水横断面積A(m2)を掛け合わせた、つぎの式から求めることができる。
    Qs=Vm・A=0.344A・Vs+0.121A・Vs2 [2]
  • 豪雨時観測などの結果から(図4はその一例)、Vsが降雨や水位の変化に的確に反応し、[2]式による流量の精度も、手計測流速法に対して±6%と、ほぼ実用レベルに達していることが確認された。

成果の活用面・留意点

  • Vmは、手計測流速法で実測し、Aは、圧力式水位計による川の水位と、測量による河床横断面積の関係から推定する。
  • VsとVmの関係は、河川ごとに求め直したほうがよい。
  • センサーがゴミや泥などに埋没すると欠測になるので、速やかに除去する。それでも欠測が多いときは、測定回数を増やす(1分間に1回の頻度まで設定可能)。
  • センサーは、DC12Vバッテリーと太陽電池パネルで周年駆動する。
  • 機材・施設等に要した費用は、一式約100万円である。

具体的データ

図1 (a)最深河床部へのセンサー設置状 況と、(b)その平面模式図 図2 2000 年9 月8 日~9 日の豪雨時に、センサー法が捉えたH-Q ループ

 

図3 深さ方向平均流速による流水横断面平均流速の推定 図4 豪雨時における水位、深さ方向平均流速、降 雨強度、および[ 3 ]式による流量の推移

その他

  • 研究課題名:農業地域からの水質負荷の実態解明
  • 予算区分:地球環境保全
  • 研究期間:2000年度(1999~2002年度)
  • 研究担当者:吉田正則、村上敏文
  • 発表論文等:1)吉田・村上(2001)日本土壌肥料学会講要47:364.
                      2)吉田・村上(2002)四万十・流域圏学会誌1(1):25-33.