水田作経営における水田利用・規模拡大に及ぼす圃場条件の影響

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要約

中山間地域の大規模水田作経営では、40%近い転作割当と米価下落への対応として、耕地規模の拡大過程において土地利用型転作作物を取り込むためには、その作付けが困難である劣悪圃場が経営水田の2割以内となるような圃場条件が必要である。

  • キーワード:大規模水田作経営、中山間地域、圃場条件、水田利用、規模拡大
  • 担当:近中四農研・総合研究部・経営管理研究室
  • 連絡先:0849-23-4100
  • 区分:近畿中国四国農業・農業経営
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

中国中山間地域においても、限定的ではあるものの大規模な水田作経営が生まれてきており、地域の農地維持管理にも重要な役割を果たしている。一方、中山間地域の大規模水田作経営は、相対的に不利な圃場条件のもとで、米価変動等の経営環境の変化に対処しなければならない。そこで、経営内の圃場条件に着目し、それが水田利用や規模拡大に及ぼす影響を、米価下落等を考慮しながら具体的に明らかにすることで、今後の経営展開の条件を提示する。

成果の内容・特徴

  • 現状の経営面積を15ha、家族労働力2.5人とする経営モデルによるシミュレーションを行った(XLPを使用)。その際、経営水田は区画の大きさと分散程度により分類された上圃場、中圃場、下圃場の3種類の圃場で構成されるものとし、経営内の圃場条件を傾斜地水田におけるそれらの構成比によって捉えた。また、水田利用においては、保全管理のみとハトムギ導入の二つの転作対応を取りあげ、ハトムギ作は上・中圃場に限定する等の条件を設定した(表1)。
  • 下圃場を多く抱える現状の圃場条件下(上:中:下=2:5:3)においては、規模拡大の過程で、ハトムギの作付けが減少していく。圃場条件が悪い中で耕地面積拡大を追求しても、農地保全的な水田利用が一定の合理性を有しており(表2)、このような条件下では米価下落による収益性の低下を回避することは限界がある。
  • 圃場条件が改善されると(上:中:下=4:5:1)、規模拡大過程でハトムギの採用が有利性をもち、経営確立助成の要件を満たす面積まで達するため、15%の米価下落下時でも保全管理転作のみによる現状所得726万円の1.3倍の949万円が確保され(表2)、収益性の向上が可能になる。
  • 現行の40%近い転作率の下で、ハトムギの導入・拡大が経営収益の改善をもたらすためには、その作付けが困難である下圃場を経営水田の2割以内とするような圃場条件が求められ(図1)、圃場の組み替えによる対応が必要である。
  • 傾斜地水田での耕地規模拡大は、本田利用に付随する畦畔・法面管理作業が増大し、15~20haを超える規模の経営では6月中旬~7月上旬、8月中旬に形成される労働ピークによって上限規模が規定される状況にあり(図2)、大規模経営に集中化するこうした地域水田維持のための負担に対する支援策を不可欠とする。

成果の活用面・留意点

  • 担い手経営の育成に当たって圃場条件の改善効果を示したものとして活用できる。
  • 広島県D町(中間農業地域)で成立する事例経営(経営面積14.7ha)の営農条件と経営実績に基づく試算である。
  • 事例経営の現状での対応である保全管理とD町で推進しているハトムギ作の導入による水田利用(転作対応)を比較したものである。
  • 圃場の組み替え、下圃場の利用に当たっては地域的な土地利用調整が求められる。

具体的データ

表1 経営モデルの前提条件

 

表2 経営耕地規模拡大と収益性

 

図1 圃場条件の違いと上限規模・収益性 図2 規模拡大と畦畔・法面管理作業(旬別)

 

その他

  • 研究課題名:中山間地域における大規模水田作経営の再編条件の解明
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:棚田光雄
  • 発表論文等:1)棚田(2001)農業経営通信No.209:6-9.
                      2)棚田(2001)平成13年度日本農業経営学会報告要旨:152.