水稲乾田直播栽培の初期水管理による苗立ち安定と除草剤散布回数の削減

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要約

水稲乾田直播栽培において、浸種、播種後走水の処理を行うことで出芽揃い、出芽速度が高まり、播種後8日目以降、早期湛水を行っても苗立ちが安定する。早期湛水を行うことにより乾田期の除草剤散布回数を1回削減でき、落ち生えも減少する。

  • キーワード:乾田直播、除草剤散布回数、浸種、播種後走水、早期湛水、苗立ち
  • 担当:近中四農研・作物開発部・栽培生理研究室
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メールyodaira@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・作物生産
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

温暖地西部の水稲乾田直播栽培では乾田期間が約一ヶ月間あり、播種直後の土壌処理剤、乾田期の茎葉処理剤、及び湛水後の一発処理剤の計3回の除草剤散布が必要で、コストがかかる要因である。そこで湛水時期を早めて乾田期の除草剤散布を省略するとともに、早期湛水を行っても苗立ちが安定する方法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 乾籾を播種し、播種後4、8、12日目の早期湛水を行うと、播種後30日目の湛水区と比較して苗立ち率が著しく低下する(図1)。浸種・播種後走水処理により出芽揃い、出芽速度が高まり、早期湛水において苗立ちが安定する。
  • 出芽始め以降(播種後8日目)の湛水により除草剤の影響が少なくなり、苗立ちが安定する(図2)。
  • 播種後8日目の湛水区では、草丈、葉齢、分げつ数が播種後30日目の湛水区より増加し、初期生育が旺盛になる(表1)。また葉色値、根重、充実度が増加し、苗質が向上する。
  • 播種後8日目の湛水区では、除草剤散布回数を1回省略しても雑草発生量は播種後30日目の湛水区と同等以下に抑制される(表1)。また、前年に落下した稲種籾から発生する落ち生えの本数が播種後30日目の湛水区より減少する。圃場試験における収量は、播種後30日目の湛水区では578(2001年)、463(2002年)g/m2であるのに対して、播種後8日目の湛水区では637(2001年)、540(2002年)g/m2となり、早期湛水処理により増収する。

成果の活用面・留意点

  • この結果は品種「ヒノヒカリ」を供試して、砂壌土の福山圃場で5月上旬播種により得られたものである。
  • 播種深度を3cmにして播種後8日目の早期湛水を行うと苗立ちが著しく低下するため、播種深度は1~2cmとする。
  • 早期湛水により出穂期葉色値の低下及び外観品質の低下が認められる場合があり、施肥法の検討が必要である。

具体的データ

図1 浸種・走水、湛水時期が出芽、苗立ちに与える影響

 

図2 除草剤、湛水時期が出芽、苗立ちに与える影響

表1 湛水時期が水稲の苗質、雑草・落ち生え発生に与える影響

その他

  • 研究課題名:乾田直播栽培における低投入最適栽培技術の確立
  • 予算区分:21世紀 5系
  • 研究期間:2001~2002年度
  • 研究担当者:大平陽一、白土宏之、竹田博之、高梨純一