製麺適性の優れる小麦新品種「ふくさやか」

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要約

小麦「ふくさやか」は「シラサギコムギ」より成熟期が1~2日早く、稈長が約10cm短く、耐倒伏性が強い。粉色のくすみが少なく、ゆで麺の色・食感が優れる。赤さび病に弱い。広島県で奨励品種に採用された。

  • キーワード:小麦、新品種、ふくさやか、製めん適性
  • 担当:近中四農研・作物開発部・小麦育種研究室
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メールishik@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・作物生産(冬作)
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

近畿中国地域の主要な小麦品種である「農林61号」と「シラサギコムギ」は成熟期が遅く、長稈で倒伏しやすく、小麦粉の色調がくすむ欠点があり、改善が求められていた。そこで早生・短稈で小麦粉の色調が優れる麺用品種の育成を行った。

成果の内容・特徴

  • 「ふくさやか」(旧系統名:中国146号)は、1988年に中国農試(現近中四農研)において「シラサギコムギ」×「シロガネコムギ」の交配を行い、派生系統育種法で育成され、2002年に命名登録された。2002年度の世代はF15である。
  • 小麦粉のくすみ(a*)が少なく、ゆで麺の色が優れる。
  • 成熟期がシラサギコムギより1~2日、農林61号より5日早い。
  • 稈長がシラサギコムギ・農林61号より約10cm短く、倒れにくい。
  • 赤さび病に弱く、うどんこ病にやや弱い。赤かび病抵抗性は農林61号と同程度の「中」である。穂発芽耐性は農林61号より弱く、シラサギコムギと同程度かやや弱い。
  • 収量は、播種量・施肥量が少ない条件(広幅条播)ではシラサギコムギより多いものの農林61号より少ない。播種量・施肥量が多い条件(ドリル播)では農林61号より多収となる。
  • 製粉性はシラサギコムギよりやや劣るが農林61号より優れる。
  • アミロース含有率はシラサギコムギ・農林61号と同程度であるが、麺の食感(粘弾性)はやや優れる。
  • 子実の蛋白質含有率はシラサギコムギよりやや低く、農林61号より高い。

成果の活用面・留意点

  • 温暖地以西の麦作地帯に適し、広島県で奨励品種に採用された。
  • 収量向上のため、排水対策を徹底するとともに、基肥を従来品種よりやや増やす。
  • 蛋白質含有率が適正値(麺用は9~10%)になるよう、蛋白質含有率が低くなりがちな圃場においては、晩期追肥を施す。

具体的データ

表1 小麦「ふくさやか」の特性一覧

その他

  • 研究課題名:温暖地西部向け高品質・早生・多収小麦品種の育成
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1988~2001年度
  • 研究担当者:石川直幸、長嶺敬、谷中美貴子、高山敏之、田谷省三、甲斐由美、谷尾昌彦、佐藤淳一、
                      村上泰臣、住田哲也