出水の周囲に林帯を持たせることによる夏季の気温緩和効果

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要約

出水周辺に林帯を持たせることにより、夏季において林内は林外に比べ約3~5℃気温が低下する。また、水路等を設置し人工的に出水の水を流下・拡散させることによって気温緩和空間を拡充させることができる。

  • キーワード:出水、林帯、気温緩和、地域資源
  • 担当:近中四農研・傾斜地基盤研究部・基盤整備研究室
  • 連絡先:0877-63-8119,hosokawa@affrc.go.jp
  • 区分:近中四農業・生産環境・(土壌・土木・気象)
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

出水は、灌漑用水としてだけではなく、生態系豊かな憩いの場としても親しまれてきた。しかし、ゴミの投棄、維持管理等の面から放棄され荒れた出水も多い。しかし、冷涼で、透明な水を湛え,湧出する出水は、付加価値の高い地域資源であり、今後とも周辺住民に親しまれる貴重な財産として位置づけられる。そこで、夏季、出水の持つ冷涼な水温(19.5~21.1℃)を利用することによって、地域住民に親しまれるミニパーク的空間の構築が考えられる。このため、出水の周辺に林帯を持たせることによる気温の緩和効果について調査検討を行う。

成果の内容・特徴

  • 「林帯を持つ出水」では、林帯(雑木林、樹林密度:約0.5本/m2、最大樹高:8~11m、樹径:約4.1~32.1cm)の中に入るにつれ、出水の影響を受けて湿度は徐々に上昇するが、逆に気温は徐々に低下する。出水に最も近い測点の気温は32.1℃であり、林外35.1℃と3.0℃の温度差がある(図1、図2)。
  • 出水からの水が流下する用水路(水路幅50cm,水深6cm)に沿った気温は、32.2~33.0℃と林外気温36.8℃に比べ3.5℃~4.5℃ほど低い。したがって、人工的に出水の水を拡散させることによって気温緩和空間が拡充される(図1,2)。
  • 「出水を持たない林帯」(上記1,2林帯の近隣)における林内側20m付近で測定した気温は、林外に比べ低下するものの、気温緩和効果は、出水を持つ場合に比べ小さい(図3)。なお、「林帯を持たない出水」では、出水直上(水面1.0m)においても周囲との気温差はなく気温緩和効果は得られない。
  • 出水に係る整備においては、当該出水が林帯を持つ場合には、林帯を伐採することがないように、また、当該出水が林帯を持たない場合には、植樹を併せて実施することが必要である。

成果の活用面・留意点

  • 行政部局における地域用水整備のうち出水に係る多面的機能付加のための整備指針として活用される。

具体的データ

図1 出水の気温緩和効果

 

図2 林帯を持つ出水概要図と測線

図3「出水+林帯」、「林帯のみ」気温比較

その他

  • 研究課題名:農村における住民とのつながりからみた地域資源の評価と保全管理の在り方
  • 予算区分:交付金・委託(近中四農政局四国調査管理事務所)
  • 研究期間:2000~2002年度
  • 研究担当者:細川雅敏、井上久義、 内田晴夫