中山間農業地域の河川における窒素流達負荷量の排出源別分離法

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要約

流域末端の河川流量や窒素負荷量の実測データをもとに、適度な長さに分割した河川流路の流達負荷量を日単位で計算する。本法により、農業から排出される窒素の河川水質に及ぼす影響を、排出源別に評価することができる。

  • キーワード:中山間流域、窒素、排出負荷、流達率、溶脱
  • 担当:近中四農研・傾斜地基盤部・資源利用研究室
  • 連絡先:電話0877-62-0800、電子メールmasanori@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

近年、農業地域から周辺の公共用水域へ排出される窒素の増加が懸念されており、農業における窒素排出量の適正管理は欠かせない。そこで本研究では、農業地域における排出負荷削減計画の策定などに資するため、耕種・畜産などの各種農業が河川水質に及ぼす影響を解析する手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本法は、流域の河川流路を、流域面積1000haに対し約200mに分割したときの各区の河川窒素負荷量を、式1や式2(後述)を用いて日単位計算する。その結果得られた流域末端の流達負荷量Ltを、流出負荷自動計測システムなどで実測した値と比較することにより、各区から排出される負荷がLtや濃度Ct(=Lt/Qt、ただしQtは実測河川流量)に及ぼす影響を、排出源別に評価する(図1a)。
  • 式1では、ある区間集水域において農地下帯水層から河川へ浸出する地下水量Qseを推定する(図1a、b)。ここでQlrとQurは、Qtに当該区の上流側集水面積と流域面積の比を乗じることにより、Qf、Qpr、Qppは流量配分図法や文献値などより与える。
  • 式2では、ある区間の下端に流達する河川水中の負荷量Llrを推定する(図1a、b)。ここで、Lfは実測のLQ関係式より、Lpr、Lpp、Lseは、式1の各流水量にそれぞれの実測濃度を乗じることにより、Lc、Ldは原単位法より与える。
  • 式2の上流区Llrを下流区Lurに置き換えながら順次反復計算することにより、排出源別のLtが計算される(図1a)。そして、排出源別Ltの合計値が流域末端の実測値に適合するようにKを定めることにより、自浄作用等に基づく流達率やCtが計算される(図1a、2)。また、各区間集水域内の農地における作目や栽培面積の違い、未熟ふん尿投入量などを考慮することにより、作目別のLseが推定でき、帯水層中の脱窒が無視できる場合には、作目別溶脱量へ読み替えることができる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 農地の窒素溶脱量の把握や、家畜ふん尿の地域内配分の適正化などに利用できる。
  • 日単位の面源排出負荷原単位が求まるので、広域の面源窒素負荷解析に応用できる。
  • 本法は、中山間地域など分水界が明瞭な地域に適する。
  • 未熟ふん尿起源の溶脱量は無機化量と同等とみなし、内田モデルより推定する。

具体的データ

図1 (a)流域における河川流路の分割と、(b)ある区間集水域における水・窒素排出経路の模式図

 

式1 地下浸出水量Qse を推定する式

 

式2 下端河川水負荷量Llr を推定する式

図2 本法を用いて作成した中山間流域の年間窒素フロー

その他

  • 研究課題名:四万十川流域における農業地域からの水質負荷の実態解明
  • 予算区分:地球環境保全
  • 研究期間:1999~2002年度
  • 研究担当者:吉田正則、島 義史、迫田登稔、関野幸二、村上敏文、吉川省子、藤原伸介
  • 発表論文等:吉田・村上(2001)四万十・流域圏学会誌1(1):25-33.