ユズ絞り滓と牛ふんを組み合わせた良質堆肥の製造法と特性

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要約

牛ふんとおがくずの混合物にユズ絞り滓を牛ふんと同量~半量(w/w)混合することにより、堆肥化過程におけるアンモニアの急激な発生が抑えられる。製造されるユズ滓牛ふんおがくず堆肥は牛ふんおがくず堆肥と同等以上の施用効果を持つ。

  • キーワード:ユズ絞り滓、牛ふん、堆肥、アンモニア発生抑制
  • 担当:近中四農研・傾斜地基盤部・資源利用研究室
  • 連絡先:電話 0877-62-0800、電子メール seikoyo@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

近年、食品加工の工程で排出される残さの廃棄処理が大きな問題となっている。特に、古くよりカンキツの栽培が盛んな四国地域では、カンキツ果実を加工する過程で大量に産出される果実の絞り滓の有効なリサイクル技術が望まれている。一方、早急な対応が迫られている有機性廃棄物の一つに家畜の排泄物がある。本研究は、雑草や悪臭を抑える効果があるとされているユズ果実の絞り滓と牛ふんという、性質の大きく異なる未利用資源を組み合わせた良質堆肥の製造法と特性の解明を目的とする。

成果の内容・特徴

  • ユズ滓牛ふんおがくず堆肥の製造法は、牛ふん:おがくず:ユズ果実の絞り滓=10:3:10~5(w/w)となるようにし、さらにユズ滓の6~30%(w/w)の炭酸カルシウムを加えて、すべてを混合する。水分が約70%(w/w)になるように調整する。堆積開始後、最初の2,3か月間に数回切り返しを行う。2か月経過するとユズ種子も判別できなくなり、さらに1,2か月経過すると、水分約60%(w/w)で、牛ふんおがくず堆肥や市販のバーク堆肥よりもEC値が低く、C/N比が23~27の堆肥が得られる(表1)。
  • 悪臭の原因となるアンモニアの発生は、牛ふんおがくず堆肥では堆積後1~2週間で急激に高まるが、ユズ絞り滓を混合した牛ふんおがくず堆肥では初期のアンモニア発生は抑えられる(図1)。ユズ滓牛ふんおがくず堆肥では、アンモニア発生の最大になる時期においてもユズの香が混ざり合い、アンモニア臭は緩和される。C/N比調整のための尿素の添加は、相当量のアンモニア揮散をもたらすため、牛ふんの混合に比べて利点が小さい(図1)。
  • 4種類の作物(サトイモ、サツマイモ、ニンジン、レタス)を用いた堆肥施用試験結果のように、ユズ滓牛ふんおがくず堆肥区では牛ふんおがくず堆肥区、市販のバーク牛ふん堆肥区と同等以上の収量が得られる(図2)。ユズ果皮の植物生長阻害作用は堆積期間中に消失し、堆肥の熱湯抽出液を用いたコマツナ発芽試験では対照と変わらないほぼ100%の発芽が得られる。

成果の活用面・留意点

  • 他の家畜ふん尿およびpHの低い未利用有機性資源を組み合わせて、アンモニア発生を抑制した堆肥の製造に応用できると考えられる。
  • 堆肥のpHが上昇しすぎるとアンモニア発生の抑制効果が薄れ、堆肥の熟成も遅れることが予想されるため、炭酸カルシウムの添加量はユズ滓の30%(w/w)以下にする。
  • 雑草種子を死滅させるに十分な温度を得るには、資材量を増やすか周囲の断熱を工夫する
  • ユズ絞り滓はユズの集荷、加工を扱っている農協や工場から11~12月に産出される。腐敗しやすいので入手後2,3日中に他の資材と混合する。

具体的データ

表1 堆肥等の品質

 

図1  堆肥周辺のアンモニア濃度

 

図2 堆肥(2001年度産)の作物栽培試験 (2反復)

その他

  • 研究課題名:カンキツ残さを活用した家畜排泄物の処理とその資源化技術の開発
  • 予算区分:バイオリサイクル
  • 研究期間:2000~2002年度
  • 研究担当者:吉川省子、村上敏文、吉田正則、藤原伸介、清水徳朗