分散圃場における水稲作作業計画支援システム

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要約

水稲作における代かきから移植までの圃場毎の作業予定日を圃場間の移動距離が小さくなるように提示するシステムである。遺伝的アルゴリズムを用いて最適化を図りGIS上に表示するとともに、計画立案者はそれを基に作業計画を策定することができる。

  • キーワード:水稲、代かき、移植、分散圃場、遺伝的アルゴリズム、作業計画
  • 担当:近中四農研・総合研究部・情報システム研究室
  • 連絡先:電話084-923-4100、 電子メールdaikoku@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・作業技術、情報研究
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

大規模水田作経営体では、借地及び作業受託圃場が分散していることが多いため、移動等に時間を要し作業効率の低下を招いている。そこで、代かきから移植までの圃場毎の作業予定日を圃場間の移動距離ができるだけ小さくなるように遺伝的アルゴリズム(以下、GA)を用いて最適化し、計画立案者に提示するシステムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、以下の手順で水稲作における圃場毎の作業日程を提示する。1)GIS上で前年度実績を参照して圃場毎に品種配置を入力する。2)品種によって定まる移植作業期間を圃場毎に設定する。3)圃場毎の移植作業期間内で圃場分散度の総和が最も小さくなるようにGAを用いて移植予定日を決定する。4)移植予定日から定まる代かき作業期間を圃場毎に設定する。5)圃場毎の代かき作業期間内で圃場分散度の総和が最も小さくなるようにGAを用いて代かき予定日を決定する(図1)。
  • 圃場分散度は、1日の作業の対象となる各圃場中心の平面座標をGISにより求め、その平均値を圃場分散の中心点とし、その中心点から各圃場の中心点までの距離を平均した値である(図2)。圃場分散度は、圃場間の移動距離と相関が高く、作業効率の指標として用いることができる(図2)。
  • GAによる最適化で準備するテーブルの種類は、圃場テーブル(圃場ID、圃場面積、圃場中心座標、作業下限日、作業上限日等)と日程テーブル(日作業人数、日作業可能面積等)である。これらのテーブルはExcel VBAを用いて作成する(図1)。
  • GAによる作業計画の計算では、作業可能期間、日作業可能面積、作業人数を制約条件とし、Visual C++で作成したプログラムを用いる(図1)。個体数50、世代数1000で計算時間は、約2分(PentiumIII 850MHz)である(表1)。
  • 品種配置や計算した作業予定日の表示及び編集は、GISソフトを用いる(図3)。
  • 本システムで計算した春作業計画における1日オペレーター1人あたりの圃場分散度の平均は約200mで、実際の作業における圃場分散度より約40%減少する(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 大規模水田作経営体での作業計画の策定に活用できる。
  • 当初の作業予定と異なった場合でも、期間途中から作業予定日を再度計算し、提示することができる。
  • 上記への連絡により、プログラム(職務作成プログラム登録予定)の提供は可能である。

具体的データ

図1.水稲作作業計画支援システムの概要

 

図2.圃場分散度の概要と移動距離との関係

 

図3.計算結果の表示及び編集画面例 表1.遺伝的アリゴリズムによる計算結果

 

その他

  • 研究課題名:篤農家等が保有する知識データのマップベース化技術の開発
  • 予算区分:軽労化農業
  • 研究期間:2000~2002年度
  • 研究担当者:大黒正道、石田茂樹、高橋英博、寺元郁博、吉田智一、亀井雅浩、窪田 潤