油圧ブレーカを利用したスパイラル杭の省力的・効果的施工技術

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要約

本技術は、平鋼をねじった形状のスパイラル杭を油圧ブレーカにより省力的に施工する方法である。中山間地の堅く締まった圃場でも迅速に施工でき、かつ土壌強度を有効に利用した耐力が得られるので、ハウス用基礎の省力的な施工方法として利用できる。

  • キーワード:スパイラル杭、油圧ブレーカ、引抜き耐力
  • 担当:近中四農研・傾斜地基盤部・機械施設研究室
  • 連絡先:0877-62-0800、hirtana@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・作業技術、共通基盤・作業技術、野菜茶業・野菜栽培生理
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ハウス建設において、基礎の施工は埋設穴の掘削、重量の大きな基礎体の持ち運び、埋め戻し等、大きな労力を伴う作業の一つであり、作業の効率化、軽作業化が望まれている。一方、平鋼をねじった形状のスパイラル杭は、土壌を掘削することなしに施工でき、従来のコンクリート基礎にかわる基礎資材として着目されている。この杭は平野部に見られる比較的軟弱な黒ボク土圃場では、人力で回転させ、ねじ込むことによって容易に施工できる。しかし、中山間傾斜地域に多く見られる下層土が固い圃場では人力でねじ込むことができず、有効な施工方法は開発されていない。そこで、省力的に施工でき、かつ大きな引き抜き耐力が発揮できる施工方法を開発し、中山間傾斜地域におけるハウス建設の軽作業化に資する。

成果の内容・特徴

  • 本技術は、平鋼をねじった形状のスパイラル杭(図1)を、油圧ブレーカを利用することにより打ち込む方法であり、省力的な施工ができ、かつ大きな引抜き耐力を発揮できる杭の機械施工技術である。
  • 油圧ブレーカの振動を利用して打ち込むため、堅く締まった圃場においても1本あたり数10秒で施工でき、埋設穴の掘削、埋め戻しが必要なコンクリート基礎に比べて省力的である。油圧ショベルは1tクラスの小型なものでも利用可能である(図2)。
  • 堅く締まった耕盤層のある圃場において、人力によるねじ込みで施工を行った場合、杭が貫入せずにその場で回転し、土壌が円筒状に破壊されてしまい、引き抜き耐力が低下する場合がある。しかし、本方法による打ち込みでは杭のねじりピッチと同一のピッチで回転しながら土壌に打ち込まれていくため、施工時に土壌を破壊することがなく、土壌のせん断強度を有効に利用した大きな耐力が得られる(図3)。
  • 本方式によって打ち込んだスパイラル杭の耐力は打ち込み深さとの関係において明確な傾向があるため(図4)、埋設深さを容易に決定できる。また、深く打ち込む場合や傾斜地における施工でも労力は変わらない。

成果の活用面・留意点

  • 油圧ショベルはその機構上、円弧状に動作するので、杭の頭にはすり鉢状に加工した金具を装着し、杭が土壌に垂直に貫入できるようにする。
  • 本成果は褐色森林土、土性SCL、Nd値18(深さ60~80cmの平均値、簡易動的コーン貫入試験)圃場での結果である。
  • 油圧ブレーカはバケットより重量があるため、特に傾斜地の作業では転倒に留意する。
  • 石礫や岩盤に当たると打ち込みが不可能であるので、これらの多い圃場には適さない。

具体的データ

図1 スパイラル杭

図2 油圧ブレーカによる杭の打ち込み

図3.引き抜き時の土の挙動

図4 施工方法の違いによる 垂直耐力の相違

その他

  • 研究課題名:低コスト園芸施設の建設技術の開発
  • 予算区分:地域新技術型
  • 研究期間:2002~2003年度
  • 研究担当者:田中宏明、猪之奥康治、角川修