ウンシュウミカンでの周年マルチ点滴潅水同時施肥法の経済性と導入効果

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要約

周年マルチ点滴潅水同時施肥法を導入すると、慣行と比べて極早生で17.5時間/10aの省力効果がもたらされる。マルチ及び点滴潅水装置の追加費用が必要になるが、早期出荷や高品質化による価格上昇で所得は表年で4~121%、裏年で16~59%向上する。

  • キーワード:ウンシュウミカン、マルチ、点滴潅水、施肥、経済性、導入効果
  • 担当:近中四農研・総合研究部・園芸経営研究室
  • 連絡先:0877-63-8117、sekinok@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・農業経営
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

カンキツ作経営の収益性向上のために高品質ミカンの生産が重要となっている。この高品質ミカンの生産と省力軽労化を目的に周年マルチと点滴潅水を組み合わせた周年マルチ点滴潅水同時施肥法(マルドリ方式)が開発された。そこで、実証園農家及び新技術導入農家のデータをもとに、この技術の経済性と導入効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • マルドリ方式の導入により、極早生での作業時間はマルチの敷設時間が増加するものの、採取回数が減るため収穫作業での減少が大きく、慣行栽培と比べ極早生で17.5時間/10aの省力効果が認められる(表1)。
  • 液肥の利用により施肥効率がよくなるため施用窒素成分量は4割程度まで減少が可能である。また、除草剤の散布も省略されるので環境保全面の効果が認められる。しかし、液肥の単価が高いこと、マルチ及び点滴潅水装置を新たに導入しなければならないため、費用は労働費の減少分を差し引いても76,853円/10aの増額となる(表1)。
  • 単収はほとんど変化しないが、秀品率の向上や糖度の上昇による評価点の加点で平均単価が上がるため、粗収益は表年で70千円/10a、裏年では138千円/10aの増収となる。しかし、マルチ及び点滴潅水装置の追加費用が発生するため、所得は表年では7千円/10aのマイナス、裏年では60千円/10aの増収となる(表1)。
  • 実証園農家(専業)規模におけるマルドリ方式の導入可能面積を線形計画法によって求めると、栽培面積210aのうち96.6a(極早生34.5a、早生62.1a)でマルドリ方式が採用され、粗収益は7,824千円、所得は3,889千円となる。労働時間は3,889時間でうち家族労働時間が3,590時間である(図1)。
  • 試算で求めた品種別技術別面積をもとに、早期出荷や高品質化による価格が変動した場合の所得の変化をみると、表年のケースIでは840.2千円で4%の増収、ケースIVでは1,776.9千円で121%の増収となり、所得の伸び率は高いが金額は少ない。裏年のケースIでは3,896.7千円となり、16%の増収、ケースIVでは5,337.1千円となり、59%の増収となる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • マルドリ方式の導入の判断材料となる。
  • 経営モデルによる収益性の検討を行う場合は地域の実情に応じて技術係数や収益係数を見直す必要がある。

具体的データ

表1 極早生におけるマルドリ方式の経済性

 

図1 マルドリ方式導入可能面積と収益性

 

表2 高品質化に伴う価格格差による所得の変化

その他

  • 研究課題名:中山間カンキツ作新技術の経営経済的評価と営農モデルの策定
  • 予算区分:中山間カンキツ園
  • 研究期間:1998~2002年度
  • 研究担当者:関野幸二、迫田登稔、島義史、吉川弘恭、中尾誠司、森永邦久、村松昇