大麦の加熱後褐変を促進する金属と低減する金属
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要約
大麦の加熱後の褐変は、銅や鉄の濃度が高いほど促進し、フィチン酸等でキレートすると低減する。亜鉛やカルシウムを添加すると、濃度が高いほど褐変は低減する。
- キーワード:大麦、褐変、鉄、銅、亜鉛、カルシウム、ペースト
- 担当:近中四農研・特産作物部・成分利用研究室
- 連絡先:0877-62-0800、norikok@affrc.go.jp
- 区分:近畿中国四国農業・食品流通、食品
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
麦飯や大麦麺等に利用されている大麦は、食物繊維を豊富に含む食材として見直されているが、米や小麦に比べて加熱調理の過程で褐変を起こしやすく、色相低下が問題となっている。この加熱後の褐変は、ポリフェノール含量が多いほど顕著な傾向があり、ポリフェノール成分が褐変の要因の一つであることが分かっているが、他の要因については解明されていない。そこで、穀粒の無機成分である金属元素に注目し、炊飯のモデルである大麦ペーストを用いて金属元素による褐変への影響を検討した。
成果の内容・特徴
- 大麦粉に含まれる金属元素(表1)の約0.5~7倍に相当する濃度の塩化銅や塩化鉄を添加したペーストでは、銅や鉄の価数がいずれであっても濃度が大きいほど加熱後の褐変が顕著となる。塩化亜鉛やカルシウム塩を添加したペーストでは、亜鉛やカルシウムの濃度が大きいほど褐変が低減する(図1)。
- 大麦ペーストに金属キレートであるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)やジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を添加すると、濃度に依存して加熱後の褐変が低減するが、カルシウムに対する選択性が高いキレートであるビス(2-アミノフェニル)エチレングリコール四酢酸(BAPTA)を添加すると褐変が促進される(図2)。
- フィチン酸は、大麦穀粒に含まれる成分の一つであるが(表1)、EDTAと同様に褐変を低減する効果がある(図2)。
成果の活用面・留意点
- 大麦穀粒に含まれる銅と鉄を低下させること、あるいは亜鉛やカルシウムを増強することにより、加熱後褐変の低減が期待できる。
- 大麦穀粒の無機成分含量は、品種、栽培条件、搗精歩合により変動する可能性がある。
- 褐変はアルカリ性で促進される傾向があるため、添加物のpHによっては褐変に影響する可能性がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:大麦の加熱後褐変機構・関与成分の解明
- 予算区分:21世紀1系
- 研究期間:2001~2005年度
- 研究担当者:神山紀子、松中仁
- 発表論文等:1) 神山・松中(2003)食科工 50(2):96-99