形状記憶合金コイルバネによるトンネル裾の自動開閉技術

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要約

トンネル内側の支柱に固定した形状記憶合金コイルバネにトンネル被覆材裾を巻き付けた適切な荷重の棒を懸垂することで、トンネル裾の気温の上昇に伴う開放および気温の低下に伴う閉鎖を自動化する。トンネル内気温は適正な生育温度に維持できる。

  • キーワード:形状記憶合金コイルバネ、トンネル栽培、換気、温度管理、省力化
  • 担当:近中四農研・野菜部・施設栽培研究室
  • 連絡先:0773-42-9906、tshimazu@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・野菜
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

トンネル栽培における換気は、人手に依存した被覆材裾の開閉作業によって行われる。この作業は、姿勢が中腰となり作業開始時間も天候に左右されるなど作業者の肉体的精神的負担が大きい。形状記憶合金(SMA; Shape Memory Alloy)コイルバネは、収縮状態を原型の記憶形状としており、これを冷却すると外力によって伸張可能な状態に結晶構造が変化し加熱によって原型に復帰する。この特性を利用してSMAコイルバネによるトンネル裾の開放作業が自動化されたが、閉鎖作業は手動に頼る課題が残された(平成4年度野菜・茶業研究成果情報)。そこで、SMAコイルバネを利用したトンネル裾の自動開閉技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • SMAコイルバネに600~700g重の荷重を与えた場合、温度変化に対して再現性のある一定幅の伸縮応答(20~25cm)を示す。昇温過程のSMAコイルバネは、30~35℃において急激に収縮する。しかし、降温過程では、35~30℃における伸張が緩慢であり、温度変化に対してヒステリシスな応答を示すが、10℃以下になると元の長さに回復する(図1)。
  • 図1の結果より、本装置は1400g重、棒長2mのパイプを被覆材に巻き付け、一方を支柱に固定した2本のSMAコイルバネで吊り下げる。パイプには、被覆材のたわみによる開放面積の減少を防止するために針金等でたわみ止めを備え付ける(図2)。同一重量の長いパイプを使用すると開放面積が増加する。
  • SMAコイルバネによる換気を行ったトンネル内は、密閉したトンネルや穴換気をしたトンネルと比較して、日中の異常高温を回避できる。また、一定温度以上になるまでは、トンネル裾が閉鎖されているので、夜明け後、すみやかに適切な温度まで上昇する。トンネル内の気温変化は翌日も同様の傾向を示し、人手がなくても自動的にトンネル裾を開閉し、温度管理が行える(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 寒冷期、日射量の多い地域でのトンネル栽培やパイプハウス内のトンネル栽培に有効である。
  • SMAコイルバネの設置角度によっては、支柱側に力が分散し伸縮幅を有効に活かせないことがあるので、できるだけ垂直に設置する。また、強風を受ける条件では、SMAコイルバネが支柱から外れないようにしっかりと固定する必要がある。
  • 今回使用したSMAコイルバネは、Ni-Ti合金、線径1.1mm、コイル径19.2mm、巻き数10巻、であるが、規格品ではないのでトンネル換気に適した温度応答をする商品開発が望まれる。

具体的データ

図1 荷重があるときの温度変化に対するSMAバネ変位の応答

 

図2 SMAコイルバネの伸縮を利用したトンネルの自動開閉装置

 

図3 換気方法の異なる農ポリトンネル内高さ20cm地点における気温の経時変化

その他

  • 研究課題名:形状記憶合金(SMA)バネを使用した簡易栽培施設の環境調節技術
  • 予算区分:交付金、重点強化費(2001年度)
  • 研究期間:2001~2002年度
  • 研究担当者:嶋津光鑑、浜本浩、池田敬