キチン質が窒素肥料としてチンゲンサイの生育に及ぼす影響
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要約
窒素無施肥の場合、脱アセチル化度85%以下のキチン質施与によってチンゲンサイの乾物重は著しく大きくなる。脱アセチル化度95%以上のキチン質は、短期間で無機化する窒素量が少なく、窒素肥料としての効果発現が遅い。
- キーワード:キチン質、無機態窒素、脱アセチル化度、チンゲンサイ
- 担当:近中四農研・特産作物部・野菜花き研究室
- 連絡先:電話0877-62-0800、電子メールakane@affrc.go.jp
- 区分:野菜茶業・野菜栽培生理、近畿中国四国農業・野菜
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
エビやカニ殻に含まれるキチン質は、種子被覆あるいは土壌混和により数種の野菜の生育を促進することが報告されており、廃棄物であるこれらの殻の農業分野での利用が期待される。しかし、栽培現場ではキチン質の生育促進効果は安定して発現しないことから、キチン質の作用機作に基づいた、効果的な施与方法を明らかにする必要がある。そこで、キチン質がアミノ基含有多糖であることに着目し、窒素肥料としての効果を数種のキチン質で比較する。
成果の内容・特徴
- キチン質は、種類によって脱アセチル化度、分子量が異なるが、全窒素含有率は6.7-7.6%の範囲にあり種類による差が小さい(表1)。
- 窒素無施肥の場合、培地(砂)に脱アセチル化度の低いキチン質(85%以下;DC30、DC60、LL、M)を添加するとチンゲンサイの乾物重は著しく大きくなるが、窒素施肥した場合は、乾物増加量が小さい(表1、図2-a、b)。したがって、窒素無施肥の場合の乾物重増加にはキチン質に含まれる窒素が関与している。
- 窒素無施肥の場合、キチン質添加による乾物増加量はキチン質の種類によって異なり、脱アセチル化度の高い(95%以上)F2P、Bの添加で小さい(表1、図2-a)。
- 砂にキチン質を添加して30℃で28日間培養すると、キチン質に含まれる窒素の1-7%が無機化する。F2P、Bを添加した場合、培養後の無機態窒素含量が脱アセチル化度85%(LL、M)のキチン質と比較して著しく低く、窒素肥料としての効果発現が遅い(図2-c、d)。
成果の活用面・留意点
- キチン質は有機態窒素肥料として利用できる可能性がある。
- 微生物の繁殖が少ない砂を培地に用いて、有機物を添加せずに試験した結果である。
- 窒素肥料以外のキチン質の効果については未解明である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:野菜・花きにおけるキトサンの生育促進・病害抑制効果の検証と利用技術の確立
- 予算区分:現地農法
- 研究期間:2000-2004
- 研究担当者:竹崎あかね・藤井寛也・藤野雅丈