中山間カンキツ園における省力的高品質果実生産技術体系

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要約

ウンシュウミカンの品質向上と管理の省力・軽労化を実現するために周年マルチと点滴灌水施肥法を組み合わせた技術を開発し、この方法による年間栽培管理基準などに関する技術マニュアルを作成する。

  • キーワード:高品質ミカン、省力・軽労化、自動化、マルチ、点滴灌水、施肥
  • 担当:近中四農研・総合研究部・総合研究第2チーム
  • 連絡先:0877-63-8115、forest@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・総合研究、果樹・栽培、近畿中国四国農業・果樹
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

ウンシュウミカンの高品質果実の安定的生産や担い手の高齢化などに対応した新しい軽労型根群域管理技術を開発することを目的として、周年マルチ点滴灌水同時施肥法(マルドリ方式)が開発され、産地に導入が進められている。より一層の普及促進を図るために本技術の効果や自動化システム、栽培基準などに関して体系化・マニュアル化を行う。

成果の内容・特徴

  • 本方法は点滴灌水チューブを樹冠下に設置し、その上から透湿性マルチシートを周年敷いて灌水と液肥による施肥管理を行なう。灌水と施肥管理は液肥タンクと液肥混入器、灌水制御機と電磁弁を用いて自動化でき、省力化が可能である(図1)。
  • 本方法で栽培管理した極早生ならびに普通ウンシュウは着色が早く、品質は糖度が高くなり、糖酸比の高い果実が得られる(図2)。果実中のβ-カロテン、β-クリプトキサンチン等の機能性成分量も対照区と比べて向上する(図3)。また、秀品率も向上する。収量は対照区と同等である。
  • 周年マルチによる夏季の地温上昇抑制や適宜灌水により、ストレスから細根を保護できる。用いた液肥による土壌中への塩類集積は3年間ではみられていない。
  • 極早生・早生では、本方法による年間必要灌水量として約175t/10a、年間窒素量として約15kg/10aを基準とする基本灌水施肥管理法を策定している(表1)。
  • 周年マルチにより除草労力が軽減され、年間17.5時間/10aの省力効果がある。また、作付面積210aの実証園農家規模におけるマルドリ方式の導入可能面積は96.6a(極早生34.5a、早生62.1a)であり、粗収益は7,824千円、所得は3,528千円となる。

成果の活用面・留意点

  • 本方法は、ウンシュウミカンの高品質果実生産と省力・軽労化を同時に図る技術として産地の維持、活性化に活用できる。
  • 技術の導入法、装置維持管理法、栽培管理法など詳細については技術マニュアルを策定しており参照できる。
  • 傾斜地での周年マルチは降雨の排水に留意し、自動化装置は保守管理を十分行なう。
  • 自動化装置を含む導入費用は利用する資材の種類によって異なるが、資材の初期投資 費は35~40万円/10a、自動化装置にマルチシートを加えた年負担額は約8万円である。

具体的データ

図1 周年マルチ点滴灌水同時施肥法の自動化システム模式図

 

図2 周年マルチ点滴灌水同時施肥法によるウンシュウミカンの品質 図3 周年マルチ栽培果実の機能性成分

 

表1 周年マルチ点滴灌水同時施肥法による基本栽培管理法

 

 

その他

  • 研究課題名:傾斜地園における軽労型根群域改善法の開発
  • 予算区分:中山間カンキツ園
  • 研究期間:1998~2002年
  • 研究担当者:森永邦久、吉川弘恭、中尾誠司、関野幸二、村松昇、長谷川美典
  • 発表論文等:1)吉川ら(2001):農及園76(6) 47-54.