放牧条件下における耕作放棄地及び暖地型牧草地の草生産量と飼料価値
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要約
耕作放棄地(植生・野草)では、肉用牛の放牧に伴って野草の乾物生産量は減少するので、牧養力が低下する。暖地型牧草地(センチピードグラス、バヒアグラス)は耕作放棄地の2~4倍の乾物生産量があり、飼料価値も高い。そこで、耕作放棄地と暖地型牧草地を組み合わせることにより牧養力を向上できる。
- キーワード:生態、放牧、耕作放棄地、暖地型牧草地、飼料価値
- 担当:近中四農研・総合研究部・総合研究第5チーム
- 連絡先:電話0854-82-0144、電子メール kym1@affrc.go.jp
- 区分:共通基盤・総合研究、近畿中国四国農業・畜産草地、畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
中国中山間地域では耕作放棄地の増加と荒廃が大きな問題となっており、その放牧利用が望まれている。保全的な放牧利用を行うためには、植生の変化やそれに伴う乾物生産量の変化を考慮した管理・利用が必要である。そこで、肉用牛の放牧にともなう植生と乾物生産量の経年変化を検討した。また、牧養力を高めるためには牧草地の利用を図る必要があるので、暖地型牧草地の乾物生産量と飼料価値を検討した。
成果の内容・特徴
- 耕作放棄地の植生と野草生産量の経年変化及び飼料価値
ススキは放牧利用に伴って衰退し、これに伴って利用4~5年目には乾物生産量も当初の52%~72%に減少する(図1)。
ススキ及びイネ科野草の粗蛋白質及びリンの含有率は低い(表1)。
- 暖地型牧草地の牧草生産量と飼料価値
センチピードグラスとバヒアグラスの乾物生産量(図2)は、耕作放棄地の野草(図1)より多い。また、飼料価値(表2)もススキやイネ科野草(表1)より高い。
センチピードグラスはランナーの伸長が旺盛である。このため、センチピードグラス草地の面積は、造成3年目の春には、造成面積(0.7a)の3.5倍(2.5a)にまで拡大する。
- 施肥条件下での暖地型牧草は野草より乾物生産量及び飼料価値が高いので、暖地型牧草地と耕作放棄地を組み合わせることにより牧養力の向上が可能である(表3)。なお、ランナーの伸長が旺盛なセンチピードグラスが有望草種である。
成果の活用面・留意点
- 中国中山間地域における耕作放棄地の長期的な放牧利用計画の立案に利用できる。
- 暖地型牧草地の造成法は、平成13年度近畿中国四国農業研究成果情報557-558を参照
- 暖地型牧草地は耕作放棄地と組み合わせて利用する。暖地型牧草地の造成にあたっては、放牧頭数、耕作放棄地の面積と乾物生産量、牧草の乾物生産量、草地造成経費等を考慮して造成面積を決める。
- 暖地型牧草地を維持し、高い乾物生産量を得るためには施肥が必要である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:放牧利用による遊休農林地の保全的管理・利用技術の開発
- 予算区分:遊休農林地活用
- 研究期間:1998~2002年度
- 研究担当者:小山信明、千田雅之、谷本保幸