CAB-02水和剤とケイ酸資材の併用によるイネ育苗期病害の防除効果

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要約

CAB-02水和剤をケイ酸資材と併用した場合、もみ枯細菌病、苗立枯細菌病の防除効果は併用しない場合と変わらない。また、ケイ酸資材による苗いもち病の防除効果は維持されていることから、両剤の併用は可能である。

  • キーワード:微生物農薬、ケイ酸資材、イネもみ枯細菌病、イネ苗立枯細菌病、イネいもち病
  • 担当:近中四農研・地域基盤研究部・病害研究室
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メールhiin@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・病害虫(病害)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

イネ育苗期は病害が発生しやすく、化学農薬による種子消毒が不可欠である。しかし近年、化学農薬を使用しない農業の推進が求められ、新たな病害防除技術の 開発が急務である。CAB-02水和剤は拮抗細菌を有効成分とする生物農薬であるが、いもち病等の糸状菌病害に対しては効果がない。今までにCAB-02 水和剤といもち病等の糸状菌病に有効な農薬を併用することで同時防除が可能なことを明らかにしてきた。一方で、育苗土にケイ酸資材を施用して育苗期間中の いもち病の発生を抑制できることが明らかになっている。そこで、CAB-02水和剤とケイ酸資材の併用より、イネもみ枯細菌病、イネ苗立枯細菌病、いもち 病に対する同時防除の可否を明らかにし、育苗時の化学農薬を使用しない病害の総合防除の確立を目指す。

成果の内容・特徴

  • 試験に使用したケイ酸資材はイネ育苗箱専用のシリカゲル肥料で、これを300g/育苗箱の割合で混合した育苗培土にCAB- 02懸濁液(108cfu/ml)で浸漬処理したもみを播種し、播種後の種子および培土中におけるCAB-02の増殖を調べると、播種1日後に約2000 倍に増殖し、シリカゲル肥料未処理の培土に播種したときと変わらず(図1)、シリカゲル肥料の影響を受けない。
  • シリカゲル肥料を床土処理したときのイネ苗中のケイ酸含量を重量法により測定すると、ケイ酸は未処理に比較して約6倍多い。 また、シリカゲル肥料を床土混和処理およびCAB-02水和剤を催芽時処理したものではシリカゲル肥料単独で処理したものと同等に苗中のケイ酸含量が増加 しており(図2)、CAB-02水和剤の影響を受けない。
  • シリカゲル肥料の床土混和処理した場合、細菌病に対する防除効果が認められるが、その効果は弱い。CAB-02水和剤の浸漬 処理とシリカゲル肥料の床土混和処理を併用したとき、CAB-02水和剤によるイネもみ枯細菌病、苗立枯細菌病に対する防除効果、およびシリカゲル肥料に よるいもち病に対する防除効果は維持されている(図3)。これらのことから、両剤の併用が可能である。

成果の活用面・留意点

  • 供試したシリカゲル肥料は可溶性ケイ酸を80%以上含む。本剤はいもち病防除剤としては平成16年1月現在、農薬取締法に基づく登録がされていない。
  • ばか苗病については検討していない。

具体的データ

図1 シリカゲル肥料を混合した育苗培土におけるCAB-02の増殖

 

図2 CAB-02水和剤とシリカゲル肥料を併用したときの苗中のケイ酸含量

 

図3 シリカゲル肥料とCAB-02水和剤を併用したときの各種病害に対する防除効果

 

その他

  • 研究課題名:拮抗微生物利用を核とした細菌性病害等の防除技術の実証
  • 課題ID:06-08-01-*-08-03
  • 予算区分:IPM
  • 研究期間:2002~2003年度
  • 研究担当者:井上博喜、宮川久義